収穫された農作物の多くが廃棄されるというアフリカが抱える問題を「オフグリッド(独立電源)」を活用した低温物流システムで解決する取り組みが、東アフリカの内陸国ルワンダで始動した。挑むのは日本と現地企業で構成し同国に設立された合弁企業のキヴコールドグループ。電力網に依存せずに新鮮な農作物を届けるサプライチェーン(供給網)の実現を目指す。農家の収入増と食糧供給不足を解消する上、電力不足の問題も解決する。
農作物の収穫後の廃棄は「ポストハーベストロス」と呼ばれ、農作物を冷蔵冷凍して市場まで運ぶインフラが整っていないため発生する。ルワンダのGDP(国内総生産)の30%強を農業が占めており、廃棄による経済損失は大きい。
この問題を解決するため2020年9月に設立されたのがキヴコールドだ。現地企業4社とともにリチウムイオン電池事業のロケットバッテリー(大阪市中央区)、低温物流のコールドストレージ・ジャパン(神戸市中央区)、ITシステムのレックスバート・コミュニケーションズ(東京都千代田区)の3社が参加。各社が得意分野で低温物流システムの構築に貢献する。
首都キガリの中心部に、太陽光発電設備と電気をためるためのリチウムイオン電池、冷却エンジンを活用したオフグリッド型冷蔵冷凍コンテナを設置。設置費用は2200万円だが、途上国を支援する政府開発援助(ODA)は利用せず、投資家から調達した。ここを農作物の集荷拠点とし、生産地から市場までの移動時に発生する廃棄を防ぐために断熱ボックスと保冷剤を使う。温度管理は遠隔監視で把握できるようにする。
21年12月に現地で開催した事業開始イベントで、ギヴコールドのアレックス・ナタレ最高経営責任者(CEO)は低温物流システムが廃棄対策に有効と紹介。オフグリッドで運用されるコンテナの冷却機能を実感した輸送業者などの参加者は高い関心を示し、導入に向けた質問が相次いだ。
その理由について、サムエル・イマニシムエ最高執行責任者(COO)は「収穫された農作物は常温で保管・輸送されるので約40%が店頭に並ぶまでに腐ってしまい廃棄されるから」と説明。その上で「われわれの(低温物流を軸にした)サプライチェーンを利用すると市場へのアクセス不安が解消され、農作物を多く提供できる。それだけ農家の収入は増え、生活も向上する」と指摘する。
キヴコールドは、送電線につながっていなくても電力を自前で調達できるオフグリッドの仕組みを冷蔵冷凍だけでなく、それ以外に幅広く活用する方針だ。
同国政府は庶民の足であるバイクタクシーの電動化に取り組んでいるが、電力が行き渡っておらず、充電ステーションが十分整備されていないのがネックとなっている。こうした国内事情を踏まえ、キヴコールドはオフグリッドを活用した充電ステーション事業も視野に入れる。
日本から参加するコールドストレージの後藤大悟代表取締役は「太陽光発電とリチウムイオン電池、冷却エンジンによる低温物流のプラットフォーム(基盤)のアフリカ版をつくる。そのショールームがルワンダに完成した」と話した。
現在は導入に前向きな顧客と実証実験を進めており、早ければ今春から事業展開を本格化させ、ルワンダに複数の冷蔵冷凍拠点を設ける考えだ。マダガスカルやタンザニアなどからの引き合いも来ているという。(松岡健夫)