22日に衆院を通過した令和4年度予算案の審議で、立憲民主党が岸田文雄首相を立ち往生させるような迫力のある場面はなかった。泉健太代表の政策提案路線に加え、週刊文春のスキャンダル記事「文春砲」に頼らず事実関係を重視する追及方針もとった。こうした姿勢には党内に不満もあるほか、政党支持率も夏の参院選を前に低迷しており、参院の予算審議ではなりふり構わぬ追及型に回帰する可能性もある。
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立民の馬淵澄夫国対委員長は22日の党会合で「引き続き岸田政権の問題点を世に知らしめて国民生活を守ることに全力を尽くしたい」と強調した。成果としては、例年に比べ衆院予算委員会の審議時間や日数、首相出席の集中審議を多く確保したことを挙げた。
週刊誌報道への対応にも変化があった。予算審議の終盤では週刊文春の報道をきっかけに、政府が今国会に提出する経済安全保障推進法案作成の中心人物だった経済安保法制準備室長が事実上更迭された問題が浮上。前室長が産業界や新聞記者と接触していたことから、立民は法案のゆがみや情報漏洩(ろうえい)の疑いを指摘し、政府は「調査中」などと火消しに追われた。
また、自民党京都府連が国政選挙前に候補者から集めた現金を組織的に地元議員に配ったとする月刊誌「文芸春秋」の報道をもとに、二之湯智国家公安委員長(参院京都選挙区)が追及される場面もあった。
しかし、「文春砲」を使った徹底的な追及を重視した旧執行部の方針とは一転、馬淵氏は審議拒否を求める党内の声などを「乱暴だ」と突っぱね、事実関係の質問を積み重ねるよう指示。自民幹部が「事実関係で詰められるのが一番嫌だ」と振り返る新たな手法には一定の評価がある。
一方、こうした姿勢が党勢回復につながったとは言い難い。産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)による19、20両日の合同世論調査で、立民の支持率は前月から1・0ポイント下がり5・0%にとどまった。ベテランの参院議員は「徹底的に批判したほうが存在感が出る」と不満を漏らした。(沢田大典)