東京都と大阪府の〝東西二極〟で、企業が地方に本社を移す動きが加速している実態が、帝国データバンクの調査で明らかになった。本社の転出数が転入数を上回る「転出超」の数は令和3年、東京・大阪とも2年比で大幅に増加。新型コロナウイルス禍が長引き、本社機能や主要拠点を都市部へ集中させることの脆弱(ぜいじゃく)性がより強く認識されるようになったほか、在宅勤務が定着したことなどが背景にある。
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3年に本社を移転した企業は全国で2258社。首都圏(東京と神奈川・千葉・埼玉の3県)から地方へ移転した企業は351社で、これまで最多だった平成6年の328社を上回り、過去最多を更新した。
東京は転入571社に対し転出893社で322社の転出超。2年の189社から約7割(133社)増えた。大阪は転入153社に対し転出213社で60社の転出超。2年の42社より約4割(18社)多かった。
3年は大手芸能事務所のアミューズが東京から山梨県富士河口湖町への、仏タイヤ大手の日本法人である日本ミシュランタイヤが東京から群馬県太田市への移転を発表するなどしている。
帝国データバンク情報統括部の飯島大介副主任の分析によると、東京から移転する企業の動機で最も多いのは、コロナや自然災害に対する事業継続計画(BCP)の観点からのリスク分散という。コロナの長期化で、こうした意識はさらに強まっているとみられる。
次いで多いのが、都市部はオフィスの賃料が高くコスト負担が膨らむため、賃料が安く、都市部の利便性を完全には捨てなくてすむ北関東などの近隣に移るケース。大阪も共通しており、兵庫県が移転先の受け皿となる傾向がみられる。
さらに、在宅勤務などテレワークの普及により、オンラインで業務を続けられる企業は地方に本社を移転する動きがある。
首都圏からの移転先として、大阪(46社)、茨城県(37社)に次いで多かった北海道は33社で、コロナ禍前の元年の7社から5倍近くに。福岡県(20社)や宮城県(14社)なども首都圏からの移転先として過去最多を記録しており、地方の中核都市が移転先の有力候補として浮上している。
一方、大阪からは首都圏への移転も多く、移転元の中では最多の67社だった。関西経済の地盤沈下が慢性化し、すでに首都圏に本社を移している企業の関連会社が追随したり、市場規模が大きく、官公庁とのつながりが強い東京のメリットを重視したりして移転しているという。
飯島氏は「2025年大阪・関西万博で観光や産業が盛り上がり、大阪発のビジネスが生まれる状況になれば、東京から観光やサービス業が進出することも考えられる」と語った。(井上浩平)