自民党は25日の総務会で令和4年運動方針案を了承した。労働組合の中央組織「連合」(総組合員数約700万人)と政策懇談を進めると明記した。連合と書かずに「労働組合との関係強化」とした昨年の運動方針より踏み込んだ。夏の参院選前に野党の支持母体にくさびを打ち込む狙いもあるとみられる。
/cloudfront-ap-northeast-1.images.arcpublishing.com/sankei/OUGGGULAOFNZ3H2PS7C27IBUGM.jpg)
「参院選必勝に向けた党活動」の章で「連合並びに友好的な労働組合との政策懇談を積極的に進めるとともに、多くの働く人々の共感を得られるよう、雇用の安定、賃金引き上げ、働き方改革など、わが党の雇用労働政策を引き続きアピールしていく」と記述した。
小渕優子組織運動本部長は25日の記者会見で「賃上げも含めて(連合と)同じ方向性で力を合わせられるところもあり、より積極的に政策懇談を進めていくことが大事ではないか」と述べた。
昨年10月の衆院選では立憲民主党が共産党と選挙協力し、反共産の連合や国民民主党の立民離れを招いた。こうした中、自民は連合との距離を縮めている。
小渕氏は17日夜、森英介労政局長とともに連合の芳野友子会長と東京都内で会食した。岸田文雄首相(自民総裁)は1月の連合の新年交歓会に現職首相としては9年ぶりに出席し、連合が重視する賃上げ実現に注力する考えをアピールした。
自民は、連合の中でも特に自動車、電力など有力な民間産業別労組(産別)との関係強化を図っている。
自民愛知県連の国会議員は昨年8月、自動車総連傘下最大の全トヨタ労働組合連合会(約35万人)と意見交換会を開催。全トヨタ労連は10月の衆院選で、過去6連勝の愛知11区の組織内候補の擁立を取り下げ、自民との政治対立を避けた。「政策実現のため与党の協力が必要」(幹部)だからだ。
立民を支える官公労系労組に対し、自動車などの民間産別は主に国民民主を支援している。国民民主は21日、政府の4年度予算案に賛成し、芳野氏もその判断に理解を示した。自民側は「主要な野党の本予算賛成は44年ぶりだ。今後政策面での提言があれば真摯(しんし)に対応していく」(茂木敏充幹事長)と歓迎する。
芳野氏は参院選での自民との連携は「全くない」と否定しているが、参院自民幹部は「立民が自滅し、連合会長が批判し始めた今が(自民の)支持を広げるチャンス。野党第一党が怖い存在ではなくなる」と語る。(田中一世)