「LINEスタンプ買ってほしいんじゃー」。JR西日本岡山支社の公式キャラクター「くまなく・たびにゃん」が、会員制交流サイト(SNS)、ツイッター上で悲痛な叫びを上げている。コロナ禍による外出自粛で鉄道利用の需要が低迷する中、JR西岡山支社が、キャラクターに親しんでもらい岡山エリアの魅力を発信しようと昨年3月に満を持して発売したLINEスタンプ。ところが当初のもくろみが外れ、売れ行きは低迷している。くまなく・たびにゃんはこのピンチを切り抜けられるのだろうか。
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全然売れていない
「当社の業績はとても厳しいのですが、LINEスタンプの売れ行きも冬の寒さのように厳しい-」「スタンプ全然売れてないのである‼」「LINEスタンプ買ってほしいんじゃ」-などとツイッター上で悲痛な訴えをしているのは、JR西岡山支社の公式キャラ「くまなく・たびにゃん」だ。
くまなく・たびにゃんは、平成27年に誕生したJR西岡山支社の活動、列車の運行状況、駅をPRするキャラクター。クマ型の「くまなく」とネコ型の「たびにゃん」の2体からなる。それぞれの名前は、「くまなく岡山を旅してほしい」という思いが込められている。
LINEスタンプは昨年3月に発売。「おはよう」「ありがとう」「了解」-などのメッセージとくまなく・たびにゃんの楽しいイラスト16種類1セット(個)で120円。LINEアプリ内のスタンプショップなどで購入することができる。
きびだんご支給減
コロナ禍による外出自粛などもあり、JR西が昨年4月に発表した令和3年3月期の連結決算では、最終赤字が2332億円。売上高は8981億円と前期比40%減と厳しい結果だった。スタンプ事業は旅客収入が伸び悩む中、新たな収益源の模索のひとつでもあった。
しかしスタンプは売れない。岡山支社企画課によると「発売当初、愛社精神の強い社員らが買ったのと、社員が親族にも買ってもらったりして昨年秋までに販売できたのは約700個」だったという。
そこで昨年11月以降、ツイッター上で「スタンプ買ってほしいんじゃ!」「全然売れていない」とくまなく・たびにゃんが激しく訴え、今年2月中旬までにようやく約1000個にまで販売を伸ばした。
だが、事業の黒字化は遠い。スタンプ作成の経費は約19万円。120円のスタンプが売れたときに岡山支社側の収入は1個あたり約35円。経費をまかなうためには約5500個を売らなくてはならない。
くまなく・たびにゃんの給与は好物のきびだんごで現物支給されているが、スタンプの売り上げ不振を理由に支給個数の減少も検討されているという。
無謀にも第2弾を
岡山支社企画課によると、くまなく・たびにゃんの活動は社内では「保守的なイメージのうちの会社の中ではとがっている」と評判は悪くないらしい。
ツイッター上でくまなく・たびにゃんが「スタンプが売れていない」ことをアピールをしてからは、フォロワーから「買いました」「頑張ってください」などと温かい声も寄せられているという。
こうした声に励まされ、岡山支社では「くまなく・たびにゃんVol.(ボリューム)1」に続く「Vol.2」を無謀にも目指しているという。
「赤字のままでは第2弾は出せない」と、ファンを増やし、スタンプを買ってもらえるよう、岡山エリアの魅力発信など日々の活動を続けていく方針だ。
くまなく・たびにゃんは「とにかくスタンプ買ってほしいんじゃ。助けてほしいんじゃ」と呼びかけている。(高田祐樹)