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全会一致至らぬ衆院対中決議 地方議員に募る不満

先月1日の衆院本会議で採択した中国・新疆ウイグル自治区などの人権状況に関する国会決議をめぐり、地方議会で中国の民族迫害を非難する意見書をまとめた保守系議員らに不満が募っている。衆院決議はれいわ新選組など少数会派の理解が得られず、原則である「全会一致」に至らなかったためだ。参院は対中非難決議を今月中旬から準備するが、ロシアのウクライナ侵攻に伴い、専制国家に毅然(きぜん)とした対応を求める声が地方で高まっている。(奥原慎平)

中国大使館前で兄の釈放を訴える在日ウイグル人の由理知沙見氏(右)とグリニサ・アブドレヒミ氏(左)=2月18日午前、東京都港区(奥原慎平撮影)
中国大使館前で兄の釈放を訴える在日ウイグル人の由理知沙見氏(右)とグリニサ・アブドレヒミ氏(左)=2月18日午前、東京都港区(奥原慎平撮影)

「全会一致を目指すなら、れいわ新選組などとちゃんと交渉すべきだった。目指さないなら、中国の民族迫害に決然と反論する当初案を用意すべきだった。表現も弱め、全会一致もなければ、中国政府にもウイグル人にもメッセージは伝わらないだろう」

秋田県の宇佐見康人県議は1日、産経新聞の取材にこう述べ、衆院決議への不満を隠さなかった。同県議会は昨年12月、ウイグル人弾圧の解決に向け、国に対応を求める意見書を採択している。

国会では超党派の日本ウイグル国会議員連盟など複数の議連が昨年3月頃から他会派と調整を重ねた。自民党幹事長の判断によって通常国会と臨時国会の2国会で見送られたが、議連側に丁寧な調整が欠けていたのは否めない。

共産党幹部は昨年末、「2国会とも議連幹部から決議への理解を求められたが、その後、採択が見送られた経緯について報告はなかった」と周囲に不信感をにじませていた。

少数会派との交渉をさほど重視しないような発言も議連幹部は漏らしていた。議連側はれいわ新選組(3人)とも交渉にあたったが、同党は衆院決議に反対し、1月31日に「『腰のひけた決議を、やってる感を出すためだけにやるな』。そうならぬよう内容の修正を求めたが、かなわなかった」とコメントした。

衆院会派「有志の会」(5人)は会派として賛成したが、緒方林太郎衆院議員は棄権を選んだ。「決議は中国に対するメッセージとしてはいかなる意味においても『圧力』にはなっていない。自民党関係者の対応は『おざなり』の最たるものだった。小会派なので仕方ないのかもしれないが、真摯(しんし)に対応いただいたとは思っていない」とSNS(会員制交流サイト)で説明した。

福島伸享衆院議員は反対し、「香港やウイグルで起きている深刻な人権侵害を冷たく突き放す文言は修正するよう与党内で調整すべきだ。普段は『人権が大事』と言いながら、大した議論も行動もせず賛成する野党も情けない。採決に至るやり取りは、国会の劣化と機能不全を明らかにしている」とSNSで主張した。

対中非難決議をめぐる調整の過程は、国会議員らを通じ、地方議員の一部に広まっている。地方議員グループ「ウイグルを応援する全国地方議員の会」は衆院決議に伴う声明で、「国政における決死の調整の結果なら受け入れるが、本当にそうか」と疑問視してみせた。

同会の小坪慎也会長代行は、産経新聞の取材に「地方議会に影響力の強い各地の重鎮議員が決議の手続きの稚拙さに憤っている」と当時頭を抱えていた。

同グループは約1700の地方議会に中国政府による民族迫害の実態を説明するなど、意見書採択の〝後方支援〟を務めており、「地方議会における意見書採択のために投じられたエネルギーは近年まれに見る規模だった。地方議会が支払った政治コストに比して(衆院で)成果が少ないという批判には、十分な熱量を国政に伝播(でんぱ)できなかった」と振り返った。

仙台市のベテラン市議も「市議会は意見書に中国政府も強制不妊手術も明記した。国会は他会派への配慮もあるのだろうが、それは地方議会も同じだ」と強調する。同市議会は昨年10月の意見書で、中国政府がウイグル人に拷問や不妊手術、性的暴行を強いているなどと報告されていることを挙げ、「深刻な懸念」を表明した。

参院は北京冬季パラリンピックが閉会する3月13日以降、衆院とは別に中国の民族迫害に関する国会決議を準備する。折しもロシアが各国議会など国際社会の批判をよそにウクライナへの軍事侵攻を続けている。

仙台市の高橋卓誠市議は「それでも専制主義国家に日本の議会はメッセージを主張し続けないといけない。中国の民族迫害について、日本人は忖度(そんたく)することなく主張すべきは主張するという毅然とした態度を示してほしい」と参院に求める。秋田県議の宇佐見氏もこう訴えた。

「覇権主義の野心を隠さない国に対し、毅然とした対応をしないと間違ったメッセージになる。中国で民族迫害が強まる恐れもある。国会は危機感を持ち、弾圧下にある中国の民族に胸をはれる決議を出すべきだ」


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