• 日経平均27819.33-180.63
  • ドル円134.96134.97

韓国・次期大統領選の争点は? 市場原理を無視した文在寅政権の“負の遺産”

PRESIDENT Online

注意したいのは、米国でこの3月を皮切りに、年内に数回の利上げが見込まれることで、そうなれば、為替の安定化を図るために、韓国で追加利上げが行われる可能性が高い。短期間での急激な利上げは消費と投資の鈍化、債務返済負担の増加、株価の下落などをまねくことになる。

すでに株価は長期金利の上昇と地政学的リスクの影響で、世界的に調整局面に入っている。以前PRESIDENT Onlineで掲載した記事「『大卒でも就職できず借金で株式投資…』韓国の若者が文在寅政権に恨みを募らせる当然の理由」でも紹介したが、韓国では近年、住宅投資と若者による株式投資が急増したため、変動金利で融資を受けた場合の影響は大きい。

大企業の投資先を海外から国内に向けられるか

もう一つは、中国経済の減速である。21年の韓国の対中輸出依存度は25.3%と高く、中国景気の影響を受けやすい。中国の成長率は21年に8.1%になったが(年後半は4%台)、22年はゼロコロナ対策の影響もあり、5%程度に低下するものと予想される。

こうしてみると、次期政権はインフレを抑制して安定成長を図りながら、次世代成長産業の育成や良質な雇用の創出、住宅価格の抑制などが課題になる。

良質な雇用の創出は、少子化(合計特殊出生率は21年に過去最低の0.81)に歯止めをかけるうえでも重要である。住宅価格や教育費の上昇などの影響もあるが、若者が安定した仕事に就けないことが少子化の主因である。良質な雇用の創出には企業の投資が欠かせないが、大企業は海外での投資を拡大している。海外の方が国内よりも高い成長が見込めるほか、国内の規制の多さが投資の阻害要因になっているため、規制緩和が課題となる。

雇用で注目されるのは、近年第2のベンチャーブームが生じ、雇用者数でベンチャー企業が4大財閥を上回ったことである。スタートアップに対する支援拡充に加え、第4次産業革命が進展するなかで、新たなビジネスチャンスが生まれていることが背景にある。この流れを広げることが重要である。

世界の5大強国入りを目指す与党候補

冒頭で触れたように、次期大統領選挙は、政権与党「共に民主党」の李在明候補と最大野党「国民の力党」の尹錫悦候補との一騎打ちになる公算が大きい。

李候補は22年1月11日、「新経済ビジョン(イジェノミクス)」を発表し、科学技術、産業、教育、国土の大転換を通じて世界の5大強国入りを目指すこと、デジタルトランスフォーメーション投資によって、200万人の雇用を創出することを宣言した。その一方、当初公約にしていたベーシックインカムの導入は、ポピュリズムとの批判を受けたこともあり、1月25日に、その対象を農漁村に限定すると表明した。

2月15日に選挙運動が正式にスタートし、中央選挙管理委員会から各候補者の10大公約が発表された(図表4)。

韓国の若者は誰の経済政策を評価するか

李候補は公約の2番目に世界5強の達成、3番目に経済的基本権の保障(ベーシックインカム)を掲げた。これらを除くと、両候補の公約には新型コロナ対策、住宅供給、雇用創出、科学技術の振興、デジタル化、未来人材の育成など共通するものが多い。

しかし、公約を実現させる政策の進め方では基本的な違いがある。李候補が政府主導の投資によって成長を図り、雇用を増やすのに対して、尹候補は規制緩和や企業間のアライアンスを進めることにより民間投資を拡大する。

また、住宅政策では、供給主体(李候補が公共部門、尹候補は民間部門中心)や不動産税制(李候補が国土保有税の導入、尹候補が税負担の緩和)、再開発に向けた規制緩和(尹候補の方が積極的)などで異なる。また、尹候補は李候補よりも財政赤字の拡大への警戒感が強い。

今回の大統領選挙では、浮動票の多い20代、30代の投票行動が鍵を握る。この世代には、公正な社会を実現できなかった上の世代(進歩・保守の両方)への反発と社会の統制を強める中国に対する否定的感情があるといわれている。若い世代を含む有権者が、候補者の経済政策をどう評価し、誰に投票するのかが注目だ。(日本総合研究所調査部 上席主任研究員 向山 英彦)(PRESIDENT Online)

向山 英彦(むこうやま・ひでひこ) 日本総合研究所調査部 上席主任研究員 1957年生まれ。中央大学法学研究科博士後期課程中退、ニューヨーク大学修士、証券系経済研究所を経て、94年より日総研に勤務。専門は、韓国を中心にしたアジア経済。著書に『東アジア経済統合への途』(日本評論社)など。


Recommend

Biz Plus

Recommend

求人情報サイト Biz x Job(ビズジョブ)

求人情報サイト Biz x Job(ビズジョブ)