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韓国・次期大統領選の争点は? 市場原理を無視した文在寅政権の“負の遺産”

PRESIDENT Online

3月9日に韓国大統領選が行われる。日本総合研究所の向山英彦上席主任研究員は「与党、野党、どちらの候補も雇用創出をうたっている。これは文在寅政権が市場原理を軽視した経済政策で雇用環境を急激に悪化させたからだ。その影響はいまだに続いており、だれが大統領になっても、韓国経済は苦しい局面が続きそうだ」という--。

2022年2月21日、韓国・ソウルの大統領府で、首席秘書官・補佐官会議で発言する文在寅大統領 写真=EPA/時事通信フォト
2022年2月21日、韓国・ソウルの大統領府で、首席秘書官・補佐官会議で発言する文在寅大統領 写真=EPA/時事通信フォト

国民の所得アップの実現を目指したはずが…

韓国の大統領選挙は現在のところ、政権与党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン、前京畿道知事)候補と最大野党「国民の力党」の尹錫悦(ユン・ソギョル、前検察総長)候補との一騎打ちになる公算が大きい。

2017年5月に発足した文在寅(ムン・ジェイン)政権は当初、家計所得を増やして成長を図る所得主導成長の実現をめざし、それに関連する政策を優先的に実施した。しかし、最低賃金の大幅な引き上げで雇用が減少したうえ、輸出の減速で景気が悪化したため、19年に入ると、設備投資の活性化や製造業の再生、次世代成長産業の育成などに注力するようになった。さらに、20年以降は新型コロナ対策に追われた。

政府の新型コロナ対策と輸出の持ち直しによって、韓国経済は20年のマイナス0.9%成長から21年には4.0%成長へと回復したが、足元でインフレが加速しているほか、雇用環境の悪化や住宅価格の高騰、財政赤字の拡大などの問題を抱えている。

設備投資に支えられて経済成長した朴槿恵政権

韓国では輸出の拡大に支えられて、2000年代に年平均成長率が4.4%を記録したが、10年代は2.6%へ低下した。中国の新常態への移行と米中対立などの影響により、輸出主導型成長が十分に機能しなくなったことによる。

13年2月に発足した朴槿恵(パク・クネ)政権は内需の拡大を図り、その一環として住宅融資規制を緩和した。相次ぐ利下げと相まって、住宅投資を含む建設投資が増加したほか、世界的な需要拡大を背景に半導体産業で設備投資が増加したことにより、15年から17年にかけて投資が成長を下支えした(図表1)。

しかし、知人で実業家の崔順実(チェ・スンシル)による国政介入が明るみに出た結果、朴大統領は17年3月に罷免され、5月に文政権が発足した。

経済政策面から文政権のこれまでの動きをみると、(1)所得主導成長に関連した政策を優先した時期、(2)政策の重点を製造業の再生や次世代成長産業の育成にシフトした時期、(3)新型コロナ対策に追われた時期に大別できる。

最低賃金の急激な引き上げで起きた「人減らし」

政権発足後、所得主導成長の実現に向けた政策(公共部門を中心にした雇用創出や非正規職の正規職への転換、最低賃金や基礎老齢年金の引き上げなど)が優先的に実施された。最低賃金は18年に前年比16.4%、19年に同10.9%引き上げられた。しかし、この急激な引き上げに伴い、卸・小売・飲食業界を中心に人減らしの動きが広がった。

また18年に入ると、朴政権下で増加した建設投資が減少に転じ、設備投資が前年に急増した反動で落ち込んだ。さらに米中対立の影響と半導体需要の一服により、秋口から輸出が減速し、製造業ではリストラが進められた。

景気が悪化したため、文政権は19年から所得主導成長に関連した政策の推進を抑制し、設備投資の活性化や製造業の再生、システム半導体や電気自動車・同電池などの次世代成長産業の育成に注力するようになった。

20年に入ると、新型コロナ対策に追われるようになった。7月には、経済の立て直しと次世代成長産業の育成を目的にした「コリアンニューディール」が発表された。(1)デジタルニューディール(5G ネットワークやAIの強化、デジタル化の推進など)、(2)グリーンニューディール(環境に優しいモビリティやエネルギーの実現など)、(3)より強固なセーフティネットの3本柱から構成され、25年までの目標と投資計画が盛り込まれた。他方、韓国銀行も政策金利を3月、5月に引き下げ、過去最低の0.5%にした。

こうした経済対策に加えて、輸出が持ち直したことにより、実質GDP成長率は20年のマイナス0.9%から21年に4.0%へ上昇した。主要輸出品目の半導体は、最大の輸出先である中国の景気回復とコロナ禍での世界的なデータ通信量の急増を背景に、20年後半から増勢が強まり、21年は前年比29.0%増となった。

経済成長率も雇用者増加数も前政権以下

21年までの文政権の実績をみると、年平均成長率は前政権の3.1%を下回る2.3%、雇用者増加数(対前年)の年平均も前政権期の35万4000人より少ない17万3000人であった。

前政権の実績を下回ったのは新型コロナ感染拡大の影響(コロナショック)が大きいとはいえ、雇用に関しては最低賃金の大幅引き上げの影響もある。


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