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【住宅クライシス】課題をスピード解決 マンション管理にもDXの波

デジタルトランスフォーメーション(DX)の波が、分譲マンションの理事会運営にも及んでいる。マンション管理のコンサルタント会社が理事会審議の支援アプリを開発、無料配信したところ、登録数が急増。資料閲覧や議題の検討、質疑などが随時可能となり、理事会の時間短縮にも大きく寄与しているのだ。新型コロナウイルス感染拡大で対面接触が控えられる中、紙や電話ベースが一般的なマンション管理のあり方が見直されつつある。

アプリから議案を確認するシャトー西梅田の理事会メンバー=大阪市福島区
アプリから議案を確認するシャトー西梅田の理事会メンバー=大阪市福島区

半分の時間に短縮

「ポンプ修理について」

時系列に並んだ一覧から議案を選んでクリックすると、詳細を記したPDFファイルの選択画面が表示される。工事に見合った金額か。賛成か、反対か。

理事会で発議された議題に対し、参加メンバーは資料閲覧の上でいつでも意思表示ができる。これがアプリの基本的な機能だ。管理組合の運営支援を手掛けるコンサルタント会社「ベタープレイス」(大阪市)が令和2年6月に無料配信を始めた。

アプリを導入したのは、大阪市福島区の「シャトー西梅田」。大規模な再開発計画が進むJR大阪駅北側の「うめきた2期」エリア近くにそびえる築44年の11階建てマンションだ。

昨年秋、約10人の理事と監事に役員専用のタブレット端末を配布。理事会当日までに議案への理解を深めたことにより、「3時間かかっていた対面での理事会が半分の時間で済むようになった」。管理組合理事長の桜井次郎さん(74)はこう話す。

住民の高齢化が進む同マンションでは、日頃からアプリにアクセスする理事や監事の大半が60歳以上。そんな中、「組合運営を次世代に適切に引き継ぎたいとの思いで、デジタル化への対応を進めている」(桜井さん)のだという。

登録数は右肩上がり

ベタープレイスの廣居義高社長(52)は、約20年にわたりマンション管理業界に身を置き、平成31年4月に同社を設立した。

管理会社ではフロントと呼ばれる担当者が、10~20件程度の分譲マンションの管理を受け持つ。

廣居さんによると、一般的に管理会社側と管理組合側とのやり取りは紙や電話ベース。紙で保存した情報をデータ化する「ペーパーレス化」の流れの中で、事務的な負担軽減と本質的な議論の活性化に寄与したいと考え、半年ほどかけてアプリを開発した。

書庫機能を使えば、過去の議事録や資料を保存することが可能で、すべての組合員にアクセス権限を付与した上で閲覧範囲を個別に設定することもできる。また、「LINE」のようにプライベート色の強い個人アカウントを開示する必要もない。

令和2年6月の配信後、登録数は右肩上がりで伸びており、現在は150件ほどの管理組合が活用しているという。

利益減も覚悟

管理会社側は通常、マンション内の懐事情を細かく把握。工事や役務の発注が必要となれば、下請けとの間の中間マージンによる利益を狙う。

「理事会が専門的な知見に基づくコスト感覚を身につけ、議論を深めるのは好ましくない」

廣居さんによると、こう考える管理会社側は、支出を伴う議案を理事会側に提示する際、即断即決を迫ることが少なくないが、アプリ活用が管理会社側の思惑をくじくことにつながる。

国土交通省の「中古住宅流通促進・活用に関する研究会」が平成25年に示した報告書は、鉄筋コンクリート造りのマンションの寿命が、100年以上に及ぶ可能性に触れた。

修繕工事を適切に施し続けることが長寿命の前提だが、新築から数十年が経過して初めて、深刻な課題と向き合うマンション管理組合も存在する。

建物の維持、修繕コストに多くの住民が無関心を続けたために組合が管理会社の〝御用組合〟と化し、度重なる資金流出で財務状況が悪化。結果的に部屋の資産価値低下を招き、管理会社からも見放されるというケースも珍しくない。

廣居さんは、クラウドサーバーの管理費用が経営を圧迫しない限り、アプリの無料配信を続けるといい、その理由をこう説明する。

「アプリが広く普及すれば、本業のコンサルの利益が減るかもしれないが、それでも構わない。積極的に自らのマンションが抱える課題と向き合い、より良いコミュニティーの形成を目指す管理組合が増えることを願っている」(岡嶋大城)


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