「日本円が中国に乗っ取られる」じわじわ支配を広げる“デジタル人民元”の本当の怖さ

    PRESIDENT Online

    中国政府が狙っているのは金融データ

    たとえば、日本のセブン‐イレブンの年間売上高は5兆円ですが、日本のスマホ決済を使えば、売り手負担3~4%の1500~2000億円を支払わねばならないところを、アリペイやウィーチャットペイを利用すると、売り手負担は0.6%の300億円以下に抑えられます。

    さらに、中国貿易業者は、海外送金手数料が無料となる可能性が出てきます。しかも、アフターコロナでは、年間1000万人の中国人観光客も来日するでしょう。

    経済的効率性を求めて誰もがデジタル人民元決済のアリペイやウィーチャットペイに飛びつくでしょう。ところが、アリペイもウィーチャットペイも中国政府も、狙っているのは手数料ではなく金融データなのです。そして、金融データとは「何にいくらお金を使っているか?」という情報であり、インターネットの検索データの「何に興味を持っている?」という情報よりも、はるかに強力なデータなのです。

    ブロックチェーンを土台としたデジタル人民元は、消費者の秘匿性を認めない設計でしょうから、アリペイやウィーチャットペイなどの登録時の個人の名前、住所、生年月日、家族構成、勤務先などの個人情報に加えて、「いつ、何に、どこで、いくらのお金を使ったか?」が中国政府にガラス張りになります。

    そして、デジタル人民元を土台としたアリペイやウィーチャットペイを決済の中心にしてしまうと、「資産、年収、支出、貯蓄がいくらあるか?」という金融情報すべてが中国政府にガラス張りになるのです。

    日本の商取引がデジタル人民元に置き換わると…

    2022年、コロナが終息し、北京オリンピックを終えて、中国人観光客が日本に押し寄せるようになって、デジタル人民元を土台としたアリペイやウィーチャットペイを日本人が利用するようになれば、日本国内のコンビニ、タクシー、ホテル・旅館、飲食業などが一斉にデジタル人民元を利用する可能性は極めて高いと考えられます。

    また、対中貿易でも、海外送金手数料がかからないことなどを理由に、中国企業からデジタル人民元での決済を日本企業は求められるかもしれません。膨大な商取引がデジタル人民元へなだれ込みます。

    日本円という通貨が消滅の危機にさらされる可能性が出てきたということです。そして、デジタル人民元を利用する中華圏に属するということは、日本人が中華経済圏に“服従した”ということになるのです。

    2000年代には、低賃金労働力を求めて中国進出した日本のテクノロジー企業が溢れかえりましたが、結果的には、日本の先端テクノロジーがすべて中国企業に吸収されて2020年代には劣勢に立たされています。今度は、インバウンドなどと日本政府がもろ手を挙げて中国人観光客を来日させる中で、日本企業が中国人観光客を獲得しようとすると、日本人全体が巧妙に中華経済圏へと組み入れられる可能性が生まれてきました。


    Recommend

    Biz Plus

    Recommend

    求人情報サイト Biz x Job(ビズジョブ)

    求人情報サイト Biz x Job(ビズジョブ)