ウクライナ避難者受け入れ対応急ぐ 生活支援や難民認定不透明

    ロシアのウクライナ侵攻をめぐり、政府がウクライナから第三国に逃れた避難者の受け入れを進める方針を打ち出している。新型コロナウイルス禍で厳しくなっている入国制限を緩和し、避難者へのビザの優先的な発給や滞在期間の更新などで柔軟に対応する方針だ。ただ、避難者が条約に基づく「難民」に認定されるかは不透明で、入国後の生活支援も課題になる。(桑波田仰太)

    ビザ発給迅速化

    「ウクライナの人々との連帯をさらに示す」

    岸田文雄首相が第三国に避難したウクライナ人を日本で受け入れる方針を明らかにしたのは、2日に行われたポーランドのモラウィエツキ首相との電話会談でのことだった。会談後は記者団に「水際対策とは別」と語り、コロナ禍の1日あたりの入国上限とは別枠で入国させる考えも示した。

    すでに外務省は在外公館に対し、ウクライナからの避難者に90日間の短期滞在ビザを優先して発給するよう指示している。同省担当者は「審査手続きも最大限簡素化して迅速に対応している」とする。

    もっとも避難者なら誰にでもビザが発給されるわけではない。現状は、親族や知人など日本に受け入れ先があることが大きな要件となっている。

    日本に在留しているウクライナ人は約1900人。政府は、日本への入国を望むのは、それら在留ウクライナ人の親族や知人が大半を占めると想定している。出入国在留管理庁の担当者は「日本にゆかりのないウクライナ人でも、受け入れ先さえあれば入国を認めたり、滞在期間を更新したりするなど柔軟に運用することはありえる。そのために国内で支援体制を整える必要がある」とする。

    「第三国定住」拡大も

    入国したウクライナの避難者が、社会保障や就労などで日本人と同等に扱われる「難民」に認定されるかは不透明だ。

    難民に認定されるには「人種、宗教、国籍などを理由に迫害を受ける恐れがある」などの難民条約の定義を満たす必要があるが、日本では通常、紛争から逃れてきたという理由だけでは難民と認められない。日本で難民認定制度を始めた昭和57年以降、延べ8万5479人が申請したが、認定されたのは841人。短期の在留資格では国内で働くことはできず、避難が長期になった場合の生活は見通せない。

    過去にはアジアでの有事の際に特例で避難者の定住を認めた事例もある。ベトナム戦争後に避難してきたベトナムやカンボジアからのインドシナ難民については難民認定制度が始まる前の昭和53年から平成17年までに計1万人以上を受け入れ、定住を認めてきた。22年からは母国を逃れ近隣諸国に滞在する人を受け入れる「第三国定住」制度によりミャンマー難民の定住を認め、日本語訓練などの就労支援を行っている。

    ただ、「第三国定住」の対象はアジアの避難者に限られ、受け入れ人数も年約60人との制限がある。政府はウクライナ避難者の長期的な支援のため、新たな特例をつくることも検討している。


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