ウクライナ危機でリセッションの恐れ 世界経済の軟着陸困難に

    ロシアのウクライナ侵攻と日米欧による厳しい制裁で、新型コロナウイルス禍から回復基調にある世界経済に一転してリセッション(景気後退)の可能性が出てきた。貿易の縮小や原油価格の高騰といった制裁の副作用が大きな下押し圧力となるからだ。市場の混乱が広がれば、各国の中央銀行による未曾有の金融緩和で生じた世界的なカネ余り(過剰流動性)相場の軟着陸も難しくなりかねない。

    下げ幅が一時800円を超えた日経平均株価を示すモニター=7日午前、東京・東新橋
    下げ幅が一時800円を超えた日経平均株価を示すモニター=7日午前、東京・東新橋

    大和証券の阿部健児チーフストラテジストはロシア産原油の禁輸が現実化した場合、米国産標準油種(WTI)は2008年に記録した過去最高値(1バレル=147・27ドル)を更新して「150ドル台に上昇する可能性がある」と指摘する。

    ロシアは原油や天然ガスの生産量で世界の1割を超えるエネルギー大国だ。特に欧州連合(EU)は天然ガスの4割をロシアに依存する。ロシアの一部銀行を国際決済ネットワーク「国際銀行間通信協会(SWIFT)」から締め出す制裁でも第1弾はエネルギー関連の決済が大きい銀行が除外されただけに、先進国が返り血覚悟で禁輸に踏み出せば、その衝撃は大きい。

    ガソリンや石油化学など原油を使う製品の値上がりは幅広い業種にコスト高となり、物価の上昇で個人消費も低迷する。英シンクタンクの国立経済社会研究所は2日、23年までに全世界の国内総生産(GDP)が1ポイント低下し、約1兆ドル(115兆円)縮小する可能性があると試算。食料品の価格上昇や供給網の混乱などで「景気後退のリスクが高まる」と警告した。

    世界経済を牽引(けんいん)してきた中国の景気も、コロナ禍の長期化でさえない。22年のGDP成長率は政府目標を「5・5%前後」と表明し、21年目標の「6・0%以上」から引き下げた。

    エネルギー資源を輸入に頼る日本もまた影響を免れない。国内企業の業績悪化で景気後退が意識されれば「日経平均株価は2万2千円台まで下落しかねない」(阿部氏)と指摘される。

    米国が月内に金融政策の引き締めに入る時期とも重なり、市場動向にいち早く反応する社債市場では債務不履行のリスクが高い米低格付け債から資金が流出し始めた。「ロシア経済を崩壊させる」(フランスのルメール経済・財務相)ことを狙う今回の制裁は、世界経済をも揺さぶっている。

    (田辺裕晶)


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