都市部では廃墟マンションが急増中…問題の背景に横たわる日本人の「新築信仰」という病

    ※写真はイメージです - 写真=iStock.com/liebre
    ※写真はイメージです - 写真=iStock.com/liebre

    日本では「空き家」が増え続けている。東京都立大学の宮本弘曉教授は、「10年後、日本の住宅の4軒に1軒は空き家になると予想されている。とくにマンションなどの共同住宅の空き家率が高い。修繕積立金の不足した物件も多く、周囲に悪影響を及ぼす廃墟マンションが急増する恐れがある」という--。

    ※本稿は、宮本弘曉『101のデータで読む日本の未来』(PHP新書)の一部を再編集したものです。

    「空き家」は放置できない大問題

    今、日本では空き家が大きな問題となっています。

    適正に管理されない空き家の増加は、街の景観を阻害するだけでなく、公衆衛生や治安を悪化させ、地域の生活環境にマイナスの影響を及ぼします。さらに、不動産価格の下落にもつながり、地域経済に大きな影響を与えます。日本の空き家問題は海外でも注目されており、IMFも2020年に調査研究を行っています。

    まずは日本で空き家がどのくらいあるのかを確認しましょう。

    総務省が5年ごとに行っている「住宅・土地統計調査」によると、日本の総住宅数は増加傾向にあり、2018年に約6240万戸となっています。一方、2018年における世帯数は5400万なので、住宅数は世帯数よりも約16%多くなっています。

    総住宅数と総世帯数の推移を比較すると、1963年までは総世帯数が総住宅数を上回っていましたが、1968年に逆転、その後は総住宅数が総世帯数を上回る状況が続いています。1世帯あたりの住宅数は近年、ほぼ横ばいで、2018年は1.16戸となっています。

    出典=宮本弘曉『101のデータで読む日本の未来 』
    出典=宮本弘曉『101のデータで読む日本の未来 』

    総務省「住宅・土地統計調査」では、ふだん人が居住している住宅を「居住世帯のある住宅」と定義しており、そうでない「居住世帯のない住宅」は「空き家」「一時現在者のみの住宅」「建築中の住宅」の3つに分けられます。なお、「一時現在者のみの住宅」とは昼間だけ使用している、何人かの人が寝泊まりしているなど、そこにふだん居住している者が1人もいない住宅のことをいいます。

    総住宅数を居住世帯の有無別でみると、居住世帯のある住宅は約5362万戸、総住宅数に占める割合は85.9%となっているのに対し、居住世帯のない住宅は約879万戸、総住宅に占める割合は14.1%となっています。居住世帯のない住宅の大半は空き家となっており、その数は約849万戸、空き家率(総住宅数に占める空き家の割合)は13.6%となっています。空き家率は増加傾向にあり、1988年の9.4%から30年間で4.2ポイントも上昇しています。

    やがて4軒に1軒が空き家になる

    今後、空き家の数はどのようになると予想されるのでしょうか?

    国立社会保障・人口問題研究所によると、日本の世帯総数のピークは2023年の5419万世帯で、その後は減少に転じ、2040年には5076万世帯になると推計しています。これは2018年の世帯数よりも約324万世帯少なくなっています。

    今後、住宅の除却や減築が進まなければ、空き家数は増加することが予想されます。2008~12年度の5年間の除却率(新設住宅着工戸数に占める除却戸数の割合)は約30%でしたが、2013~17年度は62.2%と大幅に上昇しました。

    野村総合研究所は、除却率が(1)2008~12年度の水準に戻る、(2)今後、除却率が高まる、という2つのシナリオのもと、今後の空き家率を予想しています。空き家率は、前者のシナリオでは2033年に25.5%、2038年には31%に、後者のシナリオでは2033年に18%、2028年に20.9%になると予想されています。

    空き家の半分はマンションなどの共同住宅

    ここで、空き家の実態を確認しておきましょう。

    空き家は住宅の種類別に、「一戸建」「長屋建」「共同住宅」「その他」の4つに分類することができます。2018年の一戸建の空き家は318万戸、それ以外の空き家(以下、共同住宅等)は530万戸となっており、全国の空き家のうち、半分以上がマンションなどの共同住宅となっていることがわかります。

    出典=宮本弘曉『101のデータで読む日本の未来 』
    出典=宮本弘曉『101のデータで読む日本の未来 』

    一戸建の空き家数は、1998年には183万戸であり、この20年間で大きく増加しました。また、空き家率も上昇傾向にあり、2018年には10%となっています。

    共同住宅等の空き家数も、1998年の394万戸から、この20年間で30%増加しています。

    空き家率は18%前後で推移しています。


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