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戦争は「大転換」の言い訳に ロシア依存だったドイツが超強気に急変した理由

PRESIDENT Online

驚異の「年間10万円の値上げ」になる見込み

3月4日、ガソリンスタンドの前を通ったら、衝撃的な数字が目に飛び込んできた。レギュラーガソリンの値段が1.9ユーロを超えている! 同日のレートで換算すれば、1リットル240円を超えてしまったわけだ。ちなみに2020年のレギュラーガソリンの平均価格は1.29ユーロ、21年が1.58ユーロで、今年の1月は1.72ユーロになっていた。それがその後の1カ月でさらに急騰し、しかも、上昇はまだ止まりそうにない。

エネルギー部門の高騰は石油だけではない。現在、ドイツの平均的な家庭のエネルギー代は、前年比でなんと5割も増えている。特に天然ガスの市場価格は、前年比でほぼ2倍。ドイツでは地域暖房に天然ガスを使っている自治体も多く、平均家庭のガス代の負担は、日本円にすると年間で約10万円の増加になるだろうという。

さらに石炭も需要の急増で、価格は現在、前年比でほぼ3倍に達し、それら石炭やガス価格の影響をもろに受けた電気代が暴騰中である。ドイツでは通常、多くの電力会社が1月から新料金に切り替えるが、今年の電気代はすでに平均6割も上がっている(特に新電力が、天井知らずの値上げになっている)。しかし、それでも間に合わず、例外的に4月に再値上げを計画している会社もあるという。

「極度のロシア依存」のツケがきている

ドイツではたいてい、電気代は前年の実績から弾き出された金額を12等分して毎月支払い、翌年に、実費との差額を一括精算するという方法をとっている。だから、現在支払い中の金額には進行中の電気代高騰がまだ正確には反映されておらず、すべての国民が値上げを実感しているとは限らない。

ただ、電気は贅沢品ではないので、個人での大幅な節約は難しく、もし、最終的にガスと同じ程度の値上げ幅になるとすれば、国民生活に深刻な影響を与えることは避けられない。なお、打撃を受けるのは産業界も同じで、それにより雇用が減ったりすれば、景気は急激に落ち込むだろう。

現在の常軌を逸したエネルギーの急騰は、いうまでもなく、ウクライナでの戦争によりロシアからの輸入がストップするかもしれないという市場の懸念を反映している。ドイツ経済輸出管理局などによると、2020年の統計では、ドイツの天然ガスの55.2%、石炭の48.5%、石油の33.9%がロシア産だ。

国の要であるエネルギーを、ここまで一国に依存するのは明らかな失政で、安全保障上の思考が一切働いていなかったと非難されても仕方がない。ロシアへのガス依存は30%を超えるべきではないということは、それこそ20年も前から言われていた。しかし、メルケル政権は16年間、その不文律を完璧に無視し、粛々と55%まで依存を増やしてしまった。ここまでくると、今さら慌ててもそう簡単に修正もできない。

財相はあくまでロシアのせいにするが…

だから、いくらベアボック外相(緑の党)が厳しい顔つきでロシアを非難しようが、また、ショルツ首相(社民党)が「ロシアに最大の痛みを感じさせる大規模経済制裁」を敷こうが、そして、それに国民が一致団結で拍手喝采しようが、実際にはロシアからのエネルギーの輸入が止まっているわけではない。

例えば、制裁の決定版と言われたSWIFTからのロシアの排除も、ドイツが踏み切ったのは、ロシアにエネルギー代を支払う方法を確保できたことが分かってからだった。これについてはリントナー財相(自民党)が、「決済ができないからドイツにガスを送れないという口実をロシアに与えないため」と、あたかもドイツが主導権を握っているかのような言い方をした。

しかし実際には、ガスが途絶えて困るのはドイツだ。ロシア転覆より前に、ドイツ経済が破綻するのである。だから現在もドイツには、ベラルーシ、ポーランド経由のヤマル・パイプラインでロシアの高価なガスが届けられている。

報道はショルツ首相や外相の勇ましい演説ばかり

ところが、その深刻な現実を、ドイツのメディアは国民に明確には伝えない。報道は、2月27日の臨時国会でショルツ首相が断行した政治転換(後述)の内容や、ベアボック外相の勇ましい国連でのスピーチ、そして、ウクライナのゼレンスキー大統領の英雄ぶり。まさにプーチンは悪でウクライナは善という単純素朴な勧善懲悪ストーリーになっている。


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