「EVだからこそ雪道に強い」
操縦安定性においてもガマンの必要がなくなった。2WDモデルは160kWの電気モーターで前輪を駆動する。4WDは160kWを2分割して、前後で80kWずつの電気モーター駆動としている。これにより、安定した走行が可能になった。電気モーターならではの緻密な駆動力特性が武器のようで、路面ミュー(摩擦力)が低いスノーロードでのドライブでも、タイヤが空転して足を取られることもほとんどなく、前後輪の駆動バランスを旋回性に置き換えることが確認できた。軽快なフットワークが得られていたのだ。
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実はソルテラは、トヨタのBEVの急先鋒「bZ4X」と兄弟車の関係にある。トヨタ「GR86」とスバル「BRZ」のようなスタイルで共同開発しているのだ。だが、スバルらしさを盛り込むことに余念はない。今回、デビュー前のプロトタイプであるのにもかかわらず、雪深い山岳地帯での試乗としたのがその証拠。環境が悪くても驚くほどの踏破性を披露した。「スバル=4WD」であることの主張であろう。
EVにとって最大の重量物であるバッテリーを搭載していても、動力性能に不満はない。低回転からグイグイと力強く加速するスタイルは爽快。それでいて、バッテリーの重みが4輪に均等に加わっている印象が強く、トラクション抜けもない。「EVでも雪道を走れる」ではなく、「EVだからこそ雪道に強い」なのである。
外観の印象は、これまで慣れ親しんだガソリンエンジン車の雰囲気を大きく逸脱しない。インテリアの造形も、特に奇をてらった素振りはない。それでいて先進感が盛り込まれている。良い意味でEVであることの主張を抑え、その上でEVであることのメリットに磨きをかけている印象だ。
スバル初のEVであるのにもかかわらず、肩の力が適度にぬけた超新世代EVである。
【試乗スケッチ】は、レーシングドライバーで自動車評論家の木下隆之さんが、今話題の興味深いクルマを紹介する試乗コラムです。更新は原則隔週火曜日。アーカイブはこちら。木下さんがSankeiBizで好評連載中のコラム【クルマ三昧】はこちらからどうぞ。