「教師が生徒のパスワードを取りまとめる」そんな異常事態がまかり通る日本の“IT教育”のお粗末さ

    PRESIDENT Online

    ITリテラシーがないまま大人になるとどうなるか

    ところが、先にも述べたように学校が生徒にパスワードを書かせて提出させたり、同じパスワードで管理したりと、学校側にリテラシーがない。

    もちろん、「パスワードを書かせるのはおかしいのではないか」と思う親もいれば「学校が言っているのだから任せておけばいい」と思う親までピンキリである。

    全体としてはまだまだITリテラシーに対する認識が甘いと考えている。

    しかしそうした甘い考えでは、いつか子供たちが成長したときに問題を引き起こすことになる。

    例えば、大人になってから恋人が「お互い隠し事のない生活をしたいから、スマホにロックをかけない。もしくはお互いにスマホの暗証番号を教えあおう」というような提案をしてきたとしたらどうだろうか。

    相手が「ロックをかけるということは、やましいことがあるという事だ!浮気をしていないならロックを外せ!」と責めてきたときにも、ロックをかけることの重要性や、暗証番号を教えないことの正当性をまっとうに主張することができるだろうか。

    スマホに入っているものは決して利用者の個人的な情報だけではない。メールやSNSには他人のプライベートな情報や、仕事上の情報なども入っている。

    学校ではパスワードを忘れることも「学び」になる

    スマホにロックをかけなかったり、暗証番号を他人(もちろん恋人も「他人」である)と共有してしまえば、重要な情報の漏洩を招き、社会的信用を失う可能性を増やしてしまうことになる。

    だからこそ、子供たちには幼い頃から「自分のパスワードは自分で管理し、絶対に他人に管理を委ねない」ことを教えなければならないのである。

    もちろん実務的に考えれば、タブレット端末を使った授業を行う際に子供が「先生!パスワード忘れました」と言いだし、教師がパスワードを管理していないためにログインできずに授業が進まないという事態は避けたい。そのためにパスワードを提出させるというのは分からないでもない。

    しかし、子供がパスワードを忘れたことで不利益を被るのもまた教育の一環である。

    現実社会ではパスワードを忘れれば手間をかけてパスワードの再登録をする必要があるし、ましてや流出させるなんて論外である。

    だが教育の場であれば、あらかじめ生徒がパスワードの管理を失敗しても、それを知識として学ばせることができるのだ。

    教育の場という練習段階のうちに子供に失敗の余地を残しておくのは重要だろう。

    パスワードの使い回しをやめるために使ったもの

    実は僕自身もかつてはいくつかのパスワードを複数のサービスで使い回していた。そして、使っていたサービスのいくつかで不正アクセスが起きた。具体的な時期はセキュリティ上伏せておく。

    パスワードを使い回していると、1つのサービスでパスワードが流出したときに、使い回している別のサービスのパスワードも同時にバレることになる。そのリスクは決して低くはない。

    その時に「すべてのサイトでユニークなパスワードにしなければならない」と思い立ち、一念発起でパスワード管理ソフトを導入して、すべてのサービスでパスワードの更新を行った。

    僕がネットサービスを使い始めた1990年代の中頃には、まだパスワードは6桁から8桁程度が当たり前という時代であり、サイトによっては「最長12桁」なんていう制限をしているところもあった。当時の僕の感覚としては「銀行の暗証番号の延長」という認識だった。

    今でこそブラウザやOSにパスワードの管理機能が付いているが、当時はそうした機能もない中で、徐々に増えていくネットサービスを利用するためにパスワードを使い回す人も多かったと記憶している。


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