「教師が生徒のパスワードを取りまとめる」そんな異常事態がまかり通る日本の“IT教育”のお粗末さ

    PRESIDENT Online

    IPA(情報処理推進機構)が2008年に出した資料には、大文字小文字の区別のないアルファベットのみの8桁のパスワードは約17日で解読されてしまうと書いてある。ましてや、現在ではさらにコンピュータの性能が高くなっている。セキュリティソフトを販売しているカスペルスキーのサイトに「パスワードチェッカー」というものがある。パスワード候補を入力すると、パスワードの強度などを示してくれるのだが、僕がパスワード流出した当時使っていた8桁のパスワードを入れてみると「『おっと』と言い終わる前に解読されます」と判断される。つまり、僕は今なら数秒で解析されてしまうパスワードを使い回していたのである。

    ※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Wako Megumi
    ※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Wako Megumi

    そんな古い時代のパスワードを、管理ソフトを用いてパスワードをランダム生成しながら、できるだけ長い文字数に更新していった。

    どうせパスワードは管理ソフトが保存、入力も自動的にしてくれるので、8桁のパスワードも30桁のパスワードも労力は同じである。ならば当然長い方が安全である。

    そして、パスワード更新が完了した。もはや使っていたことすら忘れた古いサービスにしか、当時使い回していたパスワードは残っていないだろう。

    とにかく時間はかかったが、思い切って古いパスワードを更新したことで、個人情報漏洩のリスクは減らすことができたのである。

    現在のパスワード管理の基本は人力に頼らず、ソフトウエアに任せる。それが誰もが安全にかつ気軽にパスワードを管理できる方法だ。

    もちろん、管理ソフトのマスターパスワードが破られれば、すべてのパスワードが流出することになるので、これだけは僕自身が人力でしっかりと管理しなければならないことは言うまでもない。

    パスワード管理能力は必須の時代

    これからインターネットのサービスを最大限活用し始める子供たちには、最初から管理ソフトを用いて、十分な強度でユニークなパスワードを設定してほしいと考えている。

    かつてまだ私たちの大半が携帯を持たず、手帳に友人知人や取引先の電話番号を書いて持ち歩いていた頃、生活の中でパスワードや暗証番号を使うのは、せいぜいキャッシュカードの暗証番号程度のものだった。

    だが今や日本人の大半がスマホや携帯を持つ時代であり、あらゆる場面でパスワードを設定することを要求される。

    そうした時代において、パスワード管理は生きていくために必要最低限の基礎的な知識であるといえる。

    だからこそ、これからの日本で生きていく子供たちには、義務教育の段階でしっかりとパスワード管理の方法を教えてほしいと考えている。

    だが残念ながら、パスワードを学校に提出させるようなリテラシー能力しかない学校では、そのような教育ができるとはとても思えないのである。(フリーライター 赤木 智弘)


    赤木 智弘(あかぎ・ともひろ) フリーライター。1975年栃木県生まれ。2007年にフリーターとして働きながら『論座』に「『丸山眞男』をひっぱたきたい--31歳、フリーター。希望は、戦争。」を執筆し、話題を呼ぶ。以後、貧困問題などをテーマに執筆。主な著書に『若者を見殺しにする国 私を戦争に向かわせるものは何か』『「当たり前」をひっぱたく 過ちを見過ごさないために』などがある。



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