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福島第1原発の現状と処理水放出 収束へ、険しい道のり

3月11日で事故から11年となる東京電力福島第1原発では、廃炉の障害となる「処理水」の海洋放出に向けた準備が進められている。廃炉実現に至る不可欠な段階だが、地元住民の合意形成など課題は多い。一方、溶融核燃料(デブリ)の除去など難関は控えたままで、事故収束への道のりはなお険しいのが実情だ。

処理水放出

福島第1原発で発生する汚染水は、多核種除去設備(ALPS)でトリチウム以外の放射性物質の大部分を取り除いた上で「処理水」としてタンクに保管している。東京電力は処理水に含まれるトリチウム以外の放射性物質が基準値を下回っていることを確認し、トリチウムが1リットル当たり1500ベクレル未満となるよう海水で100倍以上に薄め、沖合約1キロで放出する。

同原発5、6号機付近から海底の岩盤をくりぬき、直径約3メートルの海底トンネルを整備する計画だ。沖合約1キロの水域は漁業権が設定されておらず、風評被害を懸念する漁業関係者の反発も少ないと判断したとみられる。

タンクの容量は令和5年ごろに満杯になるとされており、処理水放出は廃炉に不可欠な作業となる。東電は放出による周辺海域での被曝(ひばく)線量は国や国際機関の安全基準を大幅に下回り、周辺の住民や環境に与える影響は「極めて軽微」とする評価結果を示しているが、地元住民の合意は形成できていないのが現状だ。

今後の工程は

福島第1原発の原子炉内に残存する溶融核燃料(デブリ)の取り出しは当初、2号機で昨年始まる予定だった。しかし、新型コロナウイルス禍の影響により、取り出しに使うロボットアームの搬入が停滞したため延期。東電は今年中の取り出し開始を目指している。

アームは国際廃炉研究開発機構(IRID)などが開発し、英国で製造された伸縮式で最長約22メートル、重さ約4・6トン。1月末に福島県楢葉町にある日本原子力研究開発機構(JAEA)の研究施設に到着し、原子炉格納容器を原寸大で模した設備で確認試験を重ねた上で取り出しに着手する。

一方、2月に実施された1号機の原子炉格納容器の内部調査ではデブリの可能性がある塊状の堆積物が発見され、「かなりの成果があった」(東電)。炉心溶融(メルトダウン)した1~3号機のうち唯一デブリやデブリとみられるものが未確認だったためだ。

とはいえ、水素爆発で建屋上部が損壊した1号機で、むき出しになった鉄骨の中に残るがれきの撤去もこれからの作業となる。「令和23年以降」とされた廃炉完了の目標を達成するため、越えなければならないハードルは山積している。

デブリ取り出し「廃炉への新たな段階」

東京電力福島第1廃炉推進カンパニーの小野明最高責任者が産経新聞の取材に応じた。2号機からの溶融核燃料(デブリ)取り出しが年内にも始まる見通しとなっていることについて、「この11年で取り出しに向けた準備が整ってきた」との認識を示した。

取り出されるデブリの量はごく少量となる見通しだが、成功すればそのプロセスが次世代のロボットアームなど機材の開発に勢いを与える。さらにデブリの解析も可能となる。

小野氏は「数グラムだとしてもデブリを入手できることは、廃炉の将来に向けたエポック(新たな段階)となる」と述べ、作業の成功に意欲を示した。

一方、処理水の海洋放出について、東電の計画は原子力規制委員会で審査が進められている。海底トンネルなど放出に必要となる設備の建造には規制委の認可に加え、県と大熊町、双葉町の同意も必要となる。

小野氏は「来年春の目標を達成するためにも、地元の理解を得るために丁寧(ていねい)な説明を継続したい」と語った。


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