カーボンニュートラルを旗印に自動車のEV化が急速に進んでいる。クルマが走行中に排出するCO2の総量は、工場やビルなどの社会活動での排出に比較すれば極わずかだと言われている。だが、日常的に目にすることの多い自動車が矢面に立たされているように思う。特に、ガソリンを燃焼しながら走行する内燃機関モデルに対する風当たりが強い。
たしかに地球温暖化にはCO2削減が欠かせない。そのために世界中に存在する7000万台ものクルマのCO2排出量を減らすことも大切なこと。だからガソリン車を減らすという思いになるのも当然の流れかもしれない。走行中に一切のCO2を排出しないEVがもてはやされているのはそれが理由である。
一方で、プラグインで電気を補充して走るEVの、その電気の源が化石燃料の燃焼であることも語られている。だが、あまりネガティブな議論に展開することはない。再生可能な風力発電や太陽光発電でそれが得られているのならば環境被害は少ないだろうが、日本のサステナブルなエネルギー源はまだ豊富ではない。
原発の安全性が担保できない日本では、そこから電力を得ることにも壁がある。となると水素燃料電池車が理想形なのでは、と考えられるものの、水素精製にも課題を抱えており、短絡的に解決策とはいかない。トヨタの豊田章男社長が日々口にしている通り、将来的なクルマの動力源は一つではなく、全方位的な視点で開発することが必要だ。