トルコが経済悪化懸念 露・ウクライナ会談の背景

    【カイロ=佐藤貴生】ロシアのウクライナ侵攻後、初めてとなる両国の外相会談を仲介したトルコのエルドアン大統領は10日、バイデン米大統領と電話会談し、露とウクライナの双方と対話のパイプを維持することがトルコにとって重要だと述べた。トルコは黒海をはさんで両国と向かい合っており関係も深い。戦闘の長期化は経済悪化につながりかねないとの危機感もうかがえる。

    トルコのメディアによると、同国のエネルギー天然資源省幹部は9日、天然ガスの国内需要の45%、ガソリンの40%をロシアに依存しているとし、ロシアの侵攻によりエネルギー価格が高騰する中での対露依存脱却は容易ではないと述べた。

    トルコはロシアの侵攻は受け入れられないとする一方、欧米が科した対露制裁には反対している。トルコには露から黒海経由でガスパイプラインが敷かれ、南部アックユでは露企業が原子力発電所を建設中だ。北大西洋条約機構(NATO)の加盟国でありながら露の地対空ミサイルS400も購入し、米政府は独自の対トルコ制裁を行った。

    他方でトルコはウクライナとも良好な関係を築いてきた。同国南部クリミア半島の先住少数民族、クリミア・タタール人はトルコ系でイスラム教徒が多く、エルドアン氏はウクライナの主権と領土保全を支持してきた経緯がある。

    トルコは国産の無人攻撃機をウクライナに供与しており、昨秋にはウクライナが東部を実効支配する親露派武装勢力の攻撃に同機を投入した。露の侵攻後、ウクライナはトルコ製無人機を使ってロシア軍と戦っているとも指摘される。

    トルコは露の侵攻後、同国の軍艦がボスポラス、ダーダネルス両海峡を通って黒海に入るのを制限すると表明した。ウクライナ寄りの姿勢に傾きつつも露の反発を避けるバランス外交に腐心している。

    エルドアン氏はバイデン氏との電話会談で、S400購入をめぐる「不公平」な米国の対トルコ制裁を解除すべきだと述べた。露とウクライナの外相会談を実現した功績を、シリア内戦介入などでぎくしゃくしてきた対米関係の改善につなげる狙いもちらつく。

    ただ、露とウクライナの外相がトルコ南部アンタルヤで行った10日の会談では停戦への進展はみられず、トルコの仲介外交が奏功するかは見通せない。


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