旧優生保護法をめぐり、国に賠償を命じる判決を出した東京高裁は、不法行為から20年で賠償請求権が消滅する「除斥(じょせき)期間」の適用を「被害者にとって極めて酷」とした。2月の大阪高裁の判断枠組みを踏襲しつつ、さらに救済範囲を広げた形だ。
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除斥期間は、被害から長期間が経過し証拠の効力が薄れ、不法行為の証明が難しくなる前に法的責任の有無を確定させるために設けられている。ただ、「著しく正義・公平の理念に反する特段の事情」がある場合は、効果が制限される。
東京、大阪両高裁ともに、旧法は被害者に著しい人権侵害を行っており、教科書に優生思想を正当化するような記載をするなど「国が偏見や差別を社会に浸透させた」と認定。こうした影響で、被害者らは被害についての情報を入手できず、声を上げられなかったと指摘した。
その上で、両高裁の判断は、被害者が旧法の違法性を認識できた時期の認定をめぐって分かれた。
大阪高裁は「時効」の停止要件の考え方を参考にし、旧法をめぐる訴訟が初めて起こされた平成30年5~9月ごろとした。これに対し、東京高裁は「一時金支給法が施行された31年4月24日」と認定。さらに、施行日から5年間は賠償請求できるとして、救済範囲を広げた。
最高裁が除斥期間の例外を認めたケースは過去に2件しかない。踏み込んだ司法判断が下され、国への早期救済を促す形となった。