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狙いは世界の食いしん坊 木桶醤油のグローバル戦略

昔ながらの製法で造る「木桶仕込みしょうゆ」を海外の富裕層やセレブに高級調味料として売り込み、安定した販路を確立し後世に受け継いでいこうと、香川・小豆島の蔵元の職人たちが奮闘している。彼らが中心となって作った輸出促進コンソーシアム(共同事業体)は、アジア最大級の国際食品・飲料展「FOODEX」に出展するなど、世界に向けたアピールをしているという。さらに、国内に醸造用の製桶会社はわずか1社しかなく、技能の継承も難しいため、職人らは自ら桶(おけ)づくりの習得にも挑んでいる。彼らを突き動かしているのは「木桶仕込みしょうゆを守りたい」という思いだ。

竹で編んだたがを桶の周囲に入れ、ハンマーでたたいてきつくはめていく。リズムに乗せて、数人が少しずつ移動しながら一斉にたたく。リズムに乗って楽しく作業する工夫を現場で生み出している=1月20日、香川県小豆島町
竹で編んだたがを桶の周囲に入れ、ハンマーでたたいてきつくはめていく。リズムに乗せて、数人が少しずつ移動しながら一斉にたたく。リズムに乗って楽しく作業する工夫を現場で生み出している=1月20日、香川県小豆島町

KIOKE SHOYU

「木桶仕込みしょうゆ」を後世に受け継ごうと奮闘するのは、香川県小豆島町の「醤の郷」と呼ばれるエリアにあるヤマロク醤油5代目、山本康夫社長だ。平成25年から自分たちの手で新しい木桶を作り始め、全国の醸造職人に参加を呼びかけて毎年1月開催の「木桶職人復活プロジェクト」へ発展させた。

コンソーシアムは令和3年3月に設立し、しょうゆ醸造25社のほか、国内の輸出商社、大学教授、海外の飲食店主らが参加。今年3月上旬に行われた千葉・幕張メッセでのFOODEXに25社共同ブースで出展し、新桶を展示した。

海外ではしょうゆは嗜好(しこう)品の調味料として認知され、富裕層や美食家らに「木桶仕込みしょうゆはワインやウイスキーと同じで、蔵元ごとに複雑な味や香りに特徴があり、木の容器で発酵させる高級品」という認識が浸透し始めているという。

木桶職人復活プロジェクトがネットのドキュメンタリー番組で取り上げられ、和食の基礎調味料を支える木桶文化を守ろうとするストーリーが好評だったという。

山本さんらは味とともにストーリーを海外に広めようと「KIOKE SHOYU」の魅力を伝える海外向けウェブサイトや動画、SNSなどを活用し英語で拡散していく考えだ。

木桶を自ら製作

ヤマロク醤油には毎年1月、全国の醸造業者らが集まり新しい木桶を製作している。今年はしょうゆ蔵元十数社のほか、飲食店関係者や商社など3日間で延べ600人超が訪れた。

木桶の作り方は、水漏れしない仕上げに必要な板材を作って加工する作業と、味に影響しないよう接着剤や金属のくぎは使わず竹くぎで板材を組み合わせ、たがをはめて完成させる作業がある。

木桶は全国で2千本以上あるとされるが、千本以上は小豆島の約20軒の蔵元で現役という。年間10本前後製作し、発注は徐々に増えている。

木桶をPRするため、プロジェクト期間に合わせ、発酵文化サミットや発酵文化フェスティバルを開いている。山本さんは「どんなきっかけでもいいので木桶仕込みのしょうゆとそのおいしさを知ってもらいたい」と話した。

世界シェアの1%目指す

山本さんが、木桶仕込みに危機が迫っていることを実感したのは平成21年のことだ。

堺市内の唯一の醸造用製桶会社に新桶1本を注文した際に「しょうゆ会社からの注文は戦後初めて。自分で修理できるようにしてくださいね」といわれ、衝撃を受けたという。桶の注文がほとんどなく、修理する人もいなくなりつつあるという現実に直面したのだ。

江戸時代までしょうゆ、みそ、酢、酒などは木桶仕込みで、新桶は造り酒屋で数年使われた後、桶職人が組み直し醤油蔵などで100年以上使われる循環があった。

100年以上使えるので新規注文が長い間なかった。明治以降、効率性などの面でステンレスや繊維強化プラスチックなどのタンクに取って代わられた。

山本さんは24年に新規発注した3本の製作に、小豆島の大工2人を連れて自ら木桶の作り方を習いに行った。翌25年に十数人が集まり初めて自分たちの手だけで桶を新調した。

味には絶対の自信がある。桶仕込みは四季の温度変化に応じて発酵させる天然醸造。桶や蔵に微生物がすみつき、蔵元それぞれの生態系をつくる。最低でも1年、ヤマロク主力商品の再仕込みものだと4年かかり、時間が味を作り出すともいえる。各蔵元にすみつく菌の具合や職人の仕込み方で味はそれぞれ異なるが、奥深さや複雑さが魅力だと熱く語る。

小豆島の木桶仕込みは東かがわ市引田のむしろ麴(こうじ)とともに「讃岐の醬油醸造技術」として昨年6月に新設された「登録無形民俗文化財」第1号となり伝統文化として認められた。

とはいえ、しょうゆ生産量でのシェアは1%以下。それを2%程度、つまり金額ベースで世界市場の1%を目標にする。山本さんは「1%を各社で奪い合うのではなく、木桶の作り方は共有するので、共存共栄に向け、味では切磋琢磨(せっさたくま)しながら2%に増やしましょう」と、呼びかけている。(和田基宏)


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