【北京=三塚聖平】ウクライナに軍事侵攻したロシアへの経済制裁を米欧など国際社会が強める中で、中国はロシアとの経済協力を続ける姿勢を示す。今年に入ってからもロシアとの輸出入は伸びており、中国政府は「正常な貿易協力」の継続を表明して対露制裁に距離を置く。ただ、ロシア経済への関与で中国側も米欧の制裁対象になるリスクがあり、中国企業も対応に苦慮しているとみられる。
中国税関総署が今月上旬に発表した1~2月の貿易統計(ドル建て)によると、中国とロシアの輸出と輸入を合わせた輸出入総額は前年同期比38・5%増だった。中国メディアによると、伸び率は過去12年で最も大きく、中国と世界全体の貿易総額の伸び率(15・9%)を大きく上回る。
中露両国は、対米共闘の思惑から「実質的な同盟関係」とも呼ばれる密接な関係を築く。2014年にロシアがウクライナ南部クリミアを併合し、米欧に経済制裁を科された後も、中国はロシアとエネルギー分野を中心に経済関係を強化。両国の輸出入総額は14年から5割以上増えた。
今年2月4日に北京で行われた習近平国家主席とプーチン露大統領との首脳会談に合わせ、中国へのロシア産天然ガスの供給量を100億立方メートル増やす契約を締結。ウクライナ侵攻が起きた24日には、中国政府が検疫などの理由から制限していたロシア産の小麦の輸入拡大を発表しており、経済面からロシアを支える考えだと受け止められた。
米国がロシア産原油などの輸入禁止措置を発効したことに対しても、中国外務省の趙立堅報道官は9日の記者会見で「国際法に基づかない一方的な制裁に断固として反対する」と非難。石油と天然ガスに関する「正常な貿易協力」の継続を表明している。
一方で、中国系動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」は、ウクライナ侵攻後にロシアでの動画投稿機能を停止。中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)は、ロシアとベラルーシに関連する全活動を「停止、再検討」すると発表した。
中国企業がロシアとの取引を続ければ、巻き込まれる形で米欧による非難対象になるほか、二次的な制裁を受ける危険性もある。ロシアへの配慮から対露ビジネスの縮小を大っぴらに表明することは中国当局が慎重とみられるが、個別企業が水面下でロシア事業の一部見直しを進める可能性がある。