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「視聴者がよろこぶから続けている」テレビ局がワイドショーをやめられない根本原因

PRESIDENT Online

ワイドショー的演出を開拓した「泣きの小金治」

もうかっているなら伝える情報の質を高められそうなものだが、それでもワイドショーが変わろうとしないのには理由がある。

再び時代を遡さかのぼってみよう。「アフタヌーンショー」は放送2年目に司会者をテコ入れし、落語家の桂小金治を番組の顔に据えた。司会者交代の効果は抜群で、桂小金治は顔を真っ赤にして怒鳴ったり、嗚咽(おえつ)で声が聞き取れないほど泣いたりして、「怒りの小金治、泣きの小金治」の異名を轟かせた。いま後期高齢者になった当時の視聴者は、いつ桂小金治が怒鳴るか、涙を流すかと、固唾(かたず)を飲んで見守っていたと証言している。

視聴者が求めていたものは情報の内容や質よりも暇つぶしのための喜怒哀楽や驚きだった。「アフタヌーンショー」は正午の枠としては驚異的な最高視聴率20%を記録したが、これは視聴者の感情の昂(たかぶ)りを表した数字と言っても過言ではない。こうして「アフタヌーンショー」がワイドショーの王座に就くとともに、喜怒哀楽と驚きを過剰に煽る演出もまたワイドショーの王道的手法として確立されたのだった。

番組打ち切りにつながる大事件も

芸能レポーターは数々のスターのプライバシーを暴いて大騒ぎした。ロス疑惑事件は劇場型の騒動に拡大し、豊田商事の悪徳商法をめぐる報道合戦では群がるテレビカメラの前で同社会長が殺害された。オウム真理教をめぐる一連の出来事も、興味本位で扱われた。ワイドショーの見せ物小屋化はとどまる所を知らなかった。

1985年には「アフタヌーンショー」が逮捕者を複数出す大事件を起こした。いわゆる、やらせリンチ事件だ。「激写!・中学女番長‼・セックス・リンチ全告白」と題した独自スクープを放送したところ、警察が捜査を始め、リンチ行為が番組によって仕組まれたものであることがわかったのだ。

この事件では暴行の実行犯に加え、番組担当のディレクターが暴力行為教唆容疑で逮捕された(ディレクターは略式命令で罰金刑を受けたが、後に著書の中で暴行の指示を否定)。深刻な影響を多方面に与えたこの一件で、アフタヌーンショーは20年の歴史に幕を閉じたが、同番組が確立したワイドショーの王道的手法はその後も他の番組によって継承され続けた。

止められない需要と供給のサイクル

視聴者は内容や質よりも喜怒哀楽や驚きを求める。こうした傾向を熟知した番組制作者が、視聴率獲得のため、刺激的で単純でわかりやすいネタと演出を放送する。視聴者は感情の昂りを求めてワイドショーにかじりつく。正義や嫉妬が暴走し、不安や恐怖が高められ、覗き見行為が正当化される。話題の本質は忘れ去られ、社会に騒動の跡と感情の残骸だけが残される。視聴者はもっと強い刺激と単純さを期待する。

視聴者を番組に縛り付けておくために、ワイドショーはこのサイクルを60年間止められないままなのだ。


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