ロシアによるウクライナ侵攻で偽情報の拡散などのサイバー攻撃が相次いでいることを受け、日本国内のサイバー対策について今後推進すべき政策課題をデジタル政策の専門家25人が15日までに、提言としてまとめた。安全保障の観点から、国として偽情報を分析する仕組みの導入や偽情報をチェックする民間組織への寄付税制の拡充などを盛り込んだ。
/cloudfront-ap-northeast-1.images.arcpublishing.com/sankei/ROGZXHHZGBLMJISRSTRTB5YUAA.jpg)
提言をまとめたのは喜連川(きつれがわ)優国立情報学研究所所長ら民間シンクタンク「デジタル政策フォーラム」の活動に参加する産官学の専門家25人で、16日に発表する予定。
提言は、ウクライナ侵攻に関してネット上に拡散している偽情報の中には「国家の関与が疑われるものが多数含まれている」と指摘。その上で、国家の関与が疑われる偽情報については政府が注意喚起や警告表示をできるようにすることや、安全保障の観点から国として偽情報を分析する仕組みを構築することを「検討すべきだ」とした。
笹川平和財団によると、米国や英国、欧州連合(EU)などは偽情報を分析する機関や制度を整備済みだが、日本は憲法の表現の自由が重視されてきたことなどから、対応が立ち遅れているという。
欧州に拠点を置く調査報道メディア「べリングキャット」がネット上に公開されている会員制交流サイト(SNS)の情報を基にウクライナ侵攻の状況を取りまとめたり、国家関与が疑われる偽情報の分析で成果を上げたりしていることを受け、民間ファクトチェック組織に対する寄付税制の拡充や、人工知能(AI)を活用した偽情報選別などの技術開発への積極支援も検討課題として挙げた。
デジタル技術を活用したロシアへの制裁についての課題も指摘。ウクライナのフョードロフ副首相が欧米のSNS各社に対してロシアでのサービス中断を求めたことについては、ロシア国民が内外からの正しい情報を得られなくなるとして「適切とはいえない面がある」とした。