犯罪被害者の権利確立などに取り組み平成30年に解散した「全国犯罪被害者の会(あすの会)」が「新あすの会」として再結成されることになり、東京都内で16日、記者会見を開いた。発起人代表の岡村勲弁護士(92)は「被害者の状況はなおよくなっていない」とし、さらなる支援充実を求める考えを示した。
あすの会は12年に発足。犯罪被害者や弁護士らで構成し、岡村弁護士が代表幹事などを務めた。犯罪被害者等基本法の成立や刑事裁判への被害者参加制度、凶悪事件の公訴時効撤廃などの実現に尽力し、30年に「役割を果たした」として解散していた。
自身への逆恨みから妻を殺害された犯罪被害者でもある岡村弁護士は、会見で「(以前に比べ)被害者が加害者に損害賠償請求を行いやすくはなったが、加害者は刑務所に入っており、実際に賠償を得ることは困難だ」として、被害者への補償の手薄さという課題が残っていると指摘した。
米国やフランス、ドイツでは犯罪被害者に年間500億円近い補償金などが支払われているのに、日本では8億円超にとどまるとの同会の調査結果を紹介し、加害者に代わって国が被害者に賠償金を支払う▽犯罪被害者支援を担う「犯罪被害者庁」の設置▽一連の施策実行のための予算確保-などを国に要請する方針を示した。
会見には過去の重大事件の被害者も出席、思いを語った。11年に起きた埼玉・桶川ストーカー殺人事件の遺族、猪野京子さん(71)は「事件後、裁判で多額の負担があった」として経済的支援の必要性を訴えた。オウム真理教による目黒公証役場事務長監禁致死事件で父親が犠牲になった仮谷実さん(62)も「被害に遭ったときパニックでどこに相談したらいいかわからなかった。こうした現状を改善しなければならない」と語った。