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宇宙の脱ロシア化が急速に進行…「ロシア・ロス」から「ロシア・フリー」な時代へ

ワンウェブは、多数の小型衛星を軌道に配置することで高速通信網を構築するプロジェクトであり、そのため打ち上げ頻度が高く、2022年前半だけでソユーズによる打ち上げを4回予定していた。しかし、そのすべてがキャンセルとなったいま、ワンウェブ社自体の存続が危ぶまれている。

ワンウェブ社にはいま、代替機が必要だ。

昨今、世界でもっともロケットの打ち上げ頻度が高いのはスペースX社だが、同社はスターリンク計画という類似プロジェクトを推進するライバル会社のため打ち上げ依頼がしづらい。ワンウェブ社にはインド系企業も出資していることから、インドの「PSLV」ロケットを活用することも考えられるが、いずれにせよ、計画の大幅な遅延は回避できないだろう。

同じくバイコヌールからは、欧ロ共同計画の火星探査機「エグゾマーズ2022」が今年9月にプロトンMによって、また、第4四半期には日本のアクセル・スペース社の人工衛星がソユーズ2.1aで打ち上げられる予定だった。しかし現在の状況を想えば、それら打ち上げも延期される可能性が高い。

露製RD-180を搭載の米国ロケット、ロシア無支援で打ち上げ

ウクライナ侵攻の影響は、ソユーズ・ロケットだけに留まらない。米国製ロケットにはロシア製エンジンを搭載する機種があるからだ。

米国のロッキード・マーティン社が開発した「アトラスV」ロケットは、米国防総省の軍事衛星も打ち上げる、いわば国策ロケット。ただし、その第1段ロケットにはロシア製の「RD-180」が搭載されている。そのためアトラスVを打ち上げる際には、同エンジンを開発したロシアのエネルゴマシュ社のスタッフがサポートするのが通例だ。

しかし、ロゴージンはそのサポートも停止した。そのため3月2日のアトラスVの打ち上げは、ロシアスタッフの支援なく行われた。同日、ロゴージンは米国に対するロシア製エンジンの販売停止も決定している。

【2022年3月2日のアトラスVライブ映像】

アトラスVにロシア製のRD-180を搭載することが決定された1990年代は、旧ソビエト連邦が崩壊した直後だったこともあり、米ロの関係は友好的だった。また、米国にとって安くて性能が高いロシア製エンジンは魅力的であり、ロシアにとっても外貨が得られるという相互扶助的な関係にあった。

しかし、2014年に発生したロシアのクリミア併合によって、米議会が危機感を強めた。ロシアとの関係が悪化すれば、自国ロケットの打ち上げに支障をきたすからだ。その結果、アトラスVの代替エンジンを新しく開発する法案が決まり、それは新型ロケット「ヴァルカン」の開発へと繋がる。

ヴァルカンの第1段エンジンには、ジェフ・ベゾスが主宰を務めるブルーオリジン社の「BE-4」が搭載される予定だが、それが完成する前に、ロシアがウクライナに侵攻した。ヴァルカンは当初、2022年前半の運用開始が予定されたが、やはり開発が遅延しており、すでに2023年にリスケジュールされている。

アトラスV用のRD-180エンジンはすでに24基が米国に渡っているため、新型ヴァルカンが完成するまでの繋ぎとして不足はない。しかし、ロシア人スタッフの支援復帰が見込めないいま、米国の基幹ロケットの運用としては心もとない状況が続く。

米国のISS補給機を支えるロシア製エンジン

ロゴージンが対米輸出を禁止したエンジンには「RD-181」も含まれている。このエンジンは、ノースロップ・グラマン社の「アンタレス」ロケットの第1段に2基搭載されている。アンタレスは、ISS(国際宇宙ステーション)への補給機「シグナス」も打ち上げる。

同機は今年8月に打ち上げが予定されているが、現状のままでは、そのローンチにもロシアのサポートはないだろう。無人補給機とはいえ有人プログラムに関する打ち上げだけに、今回の決定を下したロスコスモスに対しては、その人道性が追求されることになるだろう。

欧州「ヴェガC」のエンジンは戦火の中にあるウクライナ製

ソユーズを利用できなくなった欧州にはもうひとつ不安がある。ESAが運用する小型ロケット「ヴェガ」や、現在開発中の「ヴェガC」に、ウクライナ製エンジンが採用されているからだ。

ヴェガCは小型ながら4段仕様のロケットであり、1段から3段は固体燃料エンジン。第4段にだけに液体燃料エンジンが搭載され、それがウクライナ製の「RD-843」だ。


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