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宇宙の脱ロシア化が急速に進行…「ロシア・ロス」から「ロシア・フリー」な時代へ

ウクライナの南東部に「ドニプロ」という街がある。「ロケットの街」と呼ばれるこの地では、古くはロシアのICBMなどを開発設計する拠点でもあった。第二次大戦後、ここドニプロに国営企業「ユージュノエ設計局」や「ユージュマシュ工場」設立され、RD-843もこのラインで誕生した。

3月14日時点でのウクライナ侵攻マップを見ると、この地への進行度合いはさほど高くないようだが、しかし、一部のツイッター上ではユージュマシュ工場が攻撃を受けたという投稿も見受けられる。同工場では、先述したISS補給機を打ち上げる「アンタレス」の第1段用の燃料タンクユニットなども製造している。

米国ファイアフライ社、国家安全保障上の問題?

ファイアフライ社のロケット「アルファ」(左)と、2023年9月に打ち上げ予定の月面着陸機「ブルーゴースト」
ファイアフライ社のロケット「アルファ」(左)と、2023年9月に打ち上げ予定の月面着陸機「ブルーゴースト」

ウクライナのドニプロに関連した在米ベンチャー企業がもう一社ある。小型ロケット「アルファ」などを開発する宇宙開発ベンチャー「ファイアフライ・エアロスペース」社だ。

2016年以降、同社の経営権はウクライナ系イギリス人の投資家マキシム・ポリャコフ氏のもとにあったが、彼によってその研究開発センターがドニプロに開設された。ここでは巨大な3Dプリンターを駆使したエンジン製造が行われ、また同年11月には、同社が発案した無人月面着陸機「ブルーゴースト」がNASAに選定されるなどの躍進を見せていた。

しかし2021年11月、妙なことが起こる。米国の対米外国投資委員会(CFIUS)はポリアコフ氏に対し、ファイアフライ社の株式(約50%)を売却するように求めたのだ。その理由は「国家安全保障上」だとされた。おそらくNASAの選定に残ったことにより、以後の開発情報などがウクライナから流出することを米国が危惧したのではないだろうか。

ポリアコフは米国の申し出に同意して同社を売却したが、その公表日は先月の2月24日、つまり、今回のウクライナ侵攻がはじまったまさにその日だった。

ファイアフライ社の公式ウェブサイトが、ここ数ヵ月、なんら更新されていないのが気になるが、ブルーゴーストは2023年、月に向けて打ち上げられることが決定されている。

世界が目指す「ロシア・フリー」な宇宙開発

このように、いま宇宙開発業界は大きな混乱のなかにある。ソユーズ・ロスの直撃を受けた衛星業者はいま、ロケットの空席探しを強いられているが、どの席も恐らく2年先まで埋まっている。ロケットの製造には通常2、3年掛かるため、数年先まで代替機がないという事態も起こり得るだろう。

しかし一方で、宇宙大国ロシアが世界から排除されれば、とくにロケット関連事業にとっては広大なマッケートが出現する。「ロシア・ロス」から「ロシア・フリー」な宇宙開発への移行。それを実現するのは既存のロケット・メーカーだけでなく、数多くのベンチャーだ。

ロケットラボ、アストラ、ABLスペース・システムズ、リレイティビティ、日本のインターステラーテクノロジズなどなど、それら企業のなかから第二、第三のスペースXが誕生する日は、さほど遠くないに違いない。

【宇宙開発のボラティリティ】は宇宙プロジェクトのニュース、次期スケジュール、歴史のほか、宇宙の基礎知識を解説するコラムです。50年代にはじまる米ソ宇宙開発競争から近年の成果まで、激動の宇宙プロジェクトのポイントをご紹介します。アーカイブはこちら


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