消滅する新幹線回数券 ドル箱失った金券店の次の一手

    大阪と東京の間で移動を繰り返す人にとって、出費を抑えるための必須アイテムとされた新大阪-東京間の新幹線回数券が3月末で発売終了となる。ネット上で予約、購入できる「EXサービス」が普及し、こうしたチケットレス化による発売実績の減少が主な理由だ。かつて都心の金券ショップでは、仕事先や家族のもとへと急ぐサラリーマンらが「ばら売り」回数券を求め、長い列をなした。新型コロナウイルス禍前の同区間の利用者は1日およそ10万人。ドル箱路線の回数券消滅で、新たな生き残り方を模索するショップもある。

    3月末で廃止される新大阪―東京間の新幹線回数券
    3月末で廃止される新大阪―東京間の新幹線回数券

    スマホ予約が主流に

    「激安販売・新大阪-東京1万3千円」

    JR大阪駅のすぐ南側、4棟ある駅前ビル(大阪市北区)の飲食店街の中に点在する金券ショップの店頭には、新幹線回数券のばら売り額が大書されている。

    窓口で買うより、もちろん割安。あるショップの関係者は「かつては回数券で出張費を浮かせ、ビル内の居酒屋で酒を飲んでから新幹線に乗り込むサラリーマンが多かった」と明かす。

    東京行き最終の「のぞみ64号」は、新大阪駅を午後9時24分に発車する。会計を済ませて在来線で新大阪へ移動する時間を考慮しても、8時50分に席を立てば十分間に合う。

    時計を気にしつつ、大阪での最後の夜を楽しむサラリーマンはコロナ禍前は少なくなかったが、多くの人がスマートフォンで新幹線を予約するようになり、回数券を求める人は近年減り続けている。

    40年以上の歴史

    新大阪-東京間の新幹線回数券の歴史は、40年以上前までさかのぼる。

    昭和53年12月に「新幹線エコノミーきっぷ」の発売が始まり、幾度の変遷を経て、現在の「新幹線回数券」(6枚つづり8万3640円)は平成26年10月から発売されている。

    いずれも、頻繁に新幹線を利用する人に好評だったが、13年にネット上で予約や購入ができる「EXサービス」がスタート。回数券は斜陽の時代を迎える。

    EXサービスの「エクスプレス予約」(年会費1100円)を利用した場合、「のぞみ」の普通車指定席で1万3620円。正規の1万4720円(繁忙期はプラス200円、閑散期はマイナス200円)よりも千円前後安く、回数券1枚当たりとの比較でも320円安い。

    回数券の場合、新幹線利用の前後に都心の在来線にも乗車できるため、実際にどちらが〝得か損か〟は状況によって異なる。ただ、スマホで座席指定までできるEXサービスの会員数は今年2月末時点で約877万人に達し、その反動で回数券需要は大幅に減った。

    チケットレス化の流れのもと、新幹線回数券の見直しが進み、今年3月末に新大阪-東京間など東海道新幹線の計16区間(グリーン車用と普通車自由席用を含む)で発売が終了することが決まった。

    通勤、通学利用が多い区間など一部の自由席用回数券は、4月以降も発売が続くものの、JR東海は「(回数券の)利用は減少傾向にあり、状況等を踏まえて機動的に商品の設定と見直しを行う」としている。

    売り上げ減に追い打ち

    余った回数券を買い取って別の客にばら売りし、その差額で利益を得る金券ショップにとって、新大阪-東京間の新幹線回数券は、稼ぎ頭の一つだった。

    コロナ禍を背景に売り上げが下がる中、追い打ちをかける形となった今回の廃止に、大阪のあるショップの担当者は「非常に残念。従来と違う別のサービスを展開していく必要がある」と話す。

    この店では、外貨の両替を収益の柱に成長させたい考えだが、東京までの鉄道移動にも新たな商機を見いだしている。

    「在来線には、引き続き格安切符が残っている。そうした切符をいろいろと組み合わせることで、東京まで安く行ける方法をお客さんに提案していきたい」(岡嶋大城)


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