ーー星野リゾートグループに転職したのは、何かきっかけがあったのですか
「勤務していた愛知県から出身地の宮崎県に帰省する度に地方経済が疲弊していることをすごく感じました。中学時代の友人の父親がある事件を起こして逮捕されたことも知りました。スポーツマンでさわやかな印象の人だったので、経済の悪化、環境が人の人生をこんなにも変えるものかという思いも持ったんです。一方で、地方はたくさんある魅力を外部に伝えることが下手なんじゃないか、地域経済全体を盛り上げるには外貨を稼ぐようなことが必要だとも思っていました。それで地方創生の仕事がしたいと星野リゾートグループに転職し、リゾートホテルや旅館、ブライダル事業などでマーケティング戦略を立案、実行する経験を積みました」
■マーケティングは企業活動のためだけじゃない
《「誰に何をどう届けるか」の「何を」を地方の魅力と位置付ければ、マーケティングは企業活動だけのものではなくなる。マーケティングの奥は深い》
ーーマーケティングの応用範囲は広いわけですね
「地方自治体の運営、移住促進、企業誘致など対外的な広報PR、ブランディングにもマーケティングは生かせます。また、すでに海外では政治とマーケティングが関わることも当たり前です。米国の大統領選だったら、候補者個人のイメージや政策をどの有権者に届けるのかということが意識される。共和党や民主党といった政党レベルでも同じです。日本でも同じような流れが生まれると思っていますし、これから将来の日本のためを思っている政治家、官僚の方にはぜひマーケティングを活用して欲しいと思います」
ーーマーケターの側も新しい分野について学ばねばなりませんね
「それは個人的にも意識していることです。フリーランスになれば経験したことがない業界の案件にも関わるので、大量の本を読んだり、その道で活躍している人の話を聞いたりして、自分で積極的に情報を取りに行きます。それに今はインターネット上の動向を分析するさまざまなツールが出ているので、マーケターの側もそこに追いついていかねばなりません。こうしたツールをどう使いこなすか、企業活動にいかに活かすかは、私も日々、勉強しているところです」
《実践が重視されるマーケティングのスキルをもった人材は、海外に比べてマーケティングへの意識が低い日本では育ちにくいのかもしれない。だからこそ経験を積んだフリーランスのマーケターへの需要は大きいともいえそうだ》