--脱炭素の動きをどのようにとらえるか
「世界中が目指すゴールとして脱炭素社会の実現が設定されたことは、資金の好循環を実現するチャンスだ。取引先の重厚長大の企業では研究や技術開発に多くの資金が必要となる一方、投資家は低金利による運用難で困っている。両者を結びつけることができれば、国内で停滞していた資金が動き出す」
--どのように取り組んでいくのか
「時価ベースで約1兆4000億円ある政策保有株式を圧縮(売却)して投資余力を生み出し、令和12年度までに脱炭素などに取り組む企業の事業に5000億円を投資する。それを呼び水にする形で2兆円の投資機会を生み出して投資家に提供したい」
--2兆5000億円規模の投資実現を掲げる意義は
「宣言後、再生可能エネルギー関連など多くの案件で相談が寄せられている。各分野で敏感に脱炭素に動くところと協力することが大切だ。企業だけでなく、大学なども巻き込んだ活動が必要になる」
--投資先の選定の仕方は
「メーカーで独自の特許を持った博士クラスの人材を中途採用で集め、チームを作っている。水素や蓄電池、電力システムなどの専門家がいて、科学的な根拠に基づいて投資のインパクト(影響)評価を行っている。再エネなどでは知見はあるが、今後の脱炭素の取り組みでは初めてのこともある。未経験の事業では試行錯誤しながら知見を積んでいくしかないと思っている」(高久清史)
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おおやま・かずや 京大法卒。昭和63年住友信託銀行(現三井住友信託銀行)入行。執行役員などを経て、平成31年に取締役常務執行役員。令和3年4月から現職。京都府出身。