PKOと言われれば、多くの人は国連平和維持活動(Peace Keeping Operations)を思い浮かべるだろう。だが、かつてバブル経済が崩壊して金融危機が叫ばれていた頃には、別のPKOが存在した。Price Keeping Operation、公的資金を用いて日本企業の株価維持を支えた政策のことだ。
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株価維持のために買い支える国家
各企業の評価は、年度末決算の多寡、つまり黒字か赤字かで決まる。それを左右するのは、多くの企業の決算期である年度末(3月末)の株価だ。株価が上がれば時価総額だけでなく、保有している資産価値も上がり、利益を底上げできる。そのため、政府が市場に介入して主要株を買い支えていたのだ。
当時のPKOの最大の目的は、多くの株を保有していた生保や損保、さらには金融機関を守るためだ。山一證券、北海道拓殖銀行、千代田生命などに続く、ドミノ倒しのような経営破綻の連鎖を懸念した政府の苦肉の策だった。
『ハゲタカ』を発表した頃、このPKOが何年か続けて発動されていた。「情けない限りだな。こんなことをして決算調整しないと生き残れないような企業は、潰すべきじゃないのか」と憤ったのを思い出す。
だが、最近はこの言葉を目にすることがなくなった。
それだけ日本経済が健全になったということか?
いや、さにあらず。安倍晋三内閣が発足以来邁進してきた「アベノミクス」導入によって、毎月のように日銀が、東京株式市場の主要株を買い支えるのが常態化して、わざわざPKOなどと言わなくなっただけだ。しかも今回は、「経済の血液」である金融を守るという大義名分を持った限定的な支援ではなく、国内でも優良と目されている大手企業の株を買い支えているのだ。
株価は、その企業の現状を評価し将来への期待値を表すものだと、考えられている。なのに、国家が株価維持のため頻繁に買い支える――。
曲がりなりにも自由主義経済を標榜し、世界第3位の経済大国だと胸を張る国がやることとは到底思えない。