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日本人の給料がいつまでたっても上がらない根本原因 「沈みゆく国家」から抜け出すには

PRESIDENT Online

なぜ日本人の給与は上がらないのか。経営コンサルタントの倉本圭造さんは「安倍・菅政権時代の経済対策会議に参加していたデービッド・アトキンソン氏の主張が参考になる。彼によれば、日本の中小企業は『あまりにも小さいサイズ』に放置されている。それが給与が上がらない原因だ」という――。

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/NatanaelGinting
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/NatanaelGinting

具体的な経済政策に欠けている岸田政権

「経済」の話をする時に難しいのは、「経済」の話だと、一企業内部の話をしている時以上に簡単に「敵側のあいつらが全部悪い」という話にしてしまいやすいことです。特に、「市場」を絶対的な神としてありとあらゆる抵抗勢力を斬り伏せてしまおうとしたり、逆に「市場」という仕組み自体を全て拒否してしまおうとしたりする「二つの極論」に簡単に吸い寄せられてしまうのが難しいところです。

2021年10月に就任した岸田文雄首相は、「小泉政権時代以降の新自由主義(≒市場原理主義)を転換する」と表明し、日本は「新しい資本主義」の道を進むべきだと提唱しています。その路線は、平成時代に吹き荒れた「○○をぶっ壊す!」型のビジョンとは違って曖昧で分かりづらいと批判されがちですし、実際岸田政権も特に具体的な「コレ」といった政策を打ち出せてはいないようです。

ただ、その「ど真ん中」の道をなんとか具体化しなくてはいけない状況にあるのは確かです。そして「二つの極論」に引っ張られず、曖昧で分かりづらい「大上段の理想論」の中身を詰めていくためには、何か「とっかかり」となるような共有イメージが必要です。

この「とっかかり」となる共有イメージを説明するにあたって、私は普段の言論活動において色々と工夫をしてきたのですが、実際に日本政府の政策決定に影響を与えている2人の論客の名前を出して、その間の「違い」を説明するのが一番伝わりやすいと感じています。本書でもその「2人の論客」氏にご登場いただきましょう。

日本の経済政策に影響を与えている2人の論客

それは、安倍・菅政権時代の経済対策会議の同じメンバーであった竹中平蔵氏とデービッド・アトキンソン氏です。この二人は一緒くたに「市場を絶対神とし、市場原理のためなら全てを破壊する」側の人間だと一般的には思われていて、「反市場」的な日本のネット論壇やSNSでの議論では、どちらも諸悪の根源の如く嫌われています。

しかし、私や私のクライアントの中小企業経営者などの間で一致した意見として、この両者には「かなり大きな違い」があります。2人とも「全てを市場に任せて社会を破壊する悪」だと思われているが、実は両者には大きな違いがある……。この「違い」を説明することで、「2つの極論」の間にある、曖昧だが大事な理想の「具体的な中身」を詰めていくことができるはずです。

そして、岸田政権が掲げる「新しい資本主義」という漠然とした理想論の「中身を詰める」ために私が考えているのは、「竹中平蔵路線ではなくデービッド・アトキンソン路線を選び、さらにそれをアトキンソン氏が考えているよりも100倍丁寧にやる」という方向性です。

どういうことでしょうか? 具体的に見ていきましょう。

「右」からも「左」からも批判されていた竹中平蔵

竹中平蔵氏は、まさに日本における市場原理主義(いわゆる“ネオリベ”)の象徴的存在です。「ネオリベ」とは、「ネオ・リベラリズム(新自由主義)」の略で、非常に単純化して言えば、過去20~30年の間共産主義諸国の消滅とともに世界中を覆った「とにかく市場に全部任せればいい」型の経済運営の発想のことです。

もともと世界史的に見れば、共産主義が終わる1980年代末以降に、アメリカではレーガン大統領、イギリスではサッチャー首相、ドイツではシュレーダー首相といったリーダーが現れて、非常に「市場原理主義」的な改革を行った一連の流れを指します。そして、日本における「ネオリベ路線」の代表的政権だった小泉政権時代に活躍したのが竹中平蔵氏です。

小泉政権が終わってその直接的な影響力を失った以降も、徹底した「市場原理主義」的な主張を常に展開しては、いわゆる「左」の人からもいわゆる「右」の人からも批判され、過去20年間の日本経済の不調の“戦犯”のような扱いを受けています。実際の竹中平蔵氏本人がどうなのかはともあれ、日本の「政治」関係のネット論壇においては、この「偶像としての竹中平蔵」ほど嫌われている存在はいないと言っていいほどだと思います。

世界的な金融会社で活躍し、日本学を学んでいたアトキンソン氏

一方、デービッド・アトキンソン氏は、アメリカの金融会社ゴールドマン・サックスの役員を務めていたイギリス人で、今は小西美術工藝社という日本の伝統建築の修繕と補修をする会社の社長をしています。

なんだか経歴の前半と後半が別世界すぎる感じがしますが、もともとはオックスフォード大学で日本学を専攻していて、裏千家の茶道をかなり本格的にやっているような人で、たまたま別荘のお隣さんだった小西美術工藝社の前社長と個人的に知り合って依頼されて今に至るそうです。


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