社内のパワーハラスメントを把握している大企業の割合が増えていることが分かった。大企業に防止対策を義務付けた2020年6月施行の改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)が一定の成果を上げた格好だ。今年4月から中小企業も同法の対象となり、労働環境のさらなる改善が期待されるが、管理職の認識の甘さや、パワハラと指導の境界といった従来の課題は残っている。
求人情報サービスを手掛けるエン・ジャパンが497社を対象に、パワハラに関する調査をしたところ、パワハラ防止法の認知度は84%だった。20年の調査では77%だった。
社内のパワハラをどのくらい把握しているかを聞くと「把握している」が6%、「だいたい把握している」が49%で、総合的に20年の調査からわずかに下がった。
回答した企業を社員数で分けた場合、規模の大きい企業ほど社内のパワハラを把握している傾向がみられた。特に1000人以上の大企業は「把握している」が7%、「だいたい把握している」が70%で“パワハラ把握率”は77%。昨年の調査より18ポイント上昇したという。パワハラ対策の実施率でも同様に、社員数が多い企業ほど対策を行っていた。
自社のパワハラを把握していると答えた企業に、事態を把握した経緯について複数回答で質問すると、「直接本人から相談があった」(57%)と「本人の周辺(上長・同僚など)から相談があった」(56%)が突出して多く、「社内のうわさで聞いた」(37%)が続いた。「ハラスメントの現場を発見した」は16%だった。
パワハラ対策を進める上での課題を尋ねると、「管理職の認識・理解が低い」が最多で、「パワハラをしてもとがめられることなく昇進していくため、社内の士気が下がる(IT系業界)」などと訴える声もあった。次いで「基準・境界が曖昧」が課題に挙がっており、パワハラ対策の難しさが改めて浮き彫りとなった。
また、パワハラ気質の経営者層から幹部へ、幹部からその部下へと、パワハラの認識がないまま“負の連鎖”が起きたケースもあるという。
調査は昨年11月24日から12月21日にかけてインターネットで行われた。