1年6カ月療養しても完治しなかったり、重い障害が残り生活や仕事に支障をきたす場合は、障害年金を受け取れるかどうか検討することとなります。社会保険制度では「1年6カ月」を境に、その前を健康保険の傷病手当金がサポートし、その後を公的年金がサポートする形になっています。
手続きの関係でズレが生じ、傷病手当金と障害年金の両方を受給してしまうこともあり得るのですが、その場合は後から傷病手当金を返金しなければなりません。場合によっては数カ月分、額にして数十万円の返金が必要となる場合もあります。
改正後は改正前より障害年金と傷病手当金が同時に対象となるケースが増えるため、該当しそうなときは障害年金専門の社労士等に相談の際確認してみると良いでしょう。
5.出産手当金やその他の制度との調整
▼傷病手当金を受給している間に出産する場合
傷病手当金を受給している間に出産の時期が来るケースも考えられます。傷病手当金と出産手当金の両方を受け取れるときは出産手当金が優先され、傷病手当金は受給できません。受給できなかった傷病手当金の日数は改正前はそのまま消滅でしたが、改正後は温存されるため、この点も改正のメリットと言えるでしょう。
▼病気や出産で休職する際も給与が出る場合
ここまでは休職中の給与が0円であることを前提に書いてきました。しかし会社によっては、休んでいても給与が出る場合もあるでしょう。その1日の給与金額が傷病手当金より少ない場合は差額を傷病手当金として受給できます。ただし1円でも受給すれば傷病手当金受給日数を1日分消費してしまうため、給与金額が傷病手当金よりも少ない日があってもあえて請求しないという選択肢が浮上します。
(給与が傷病手当金より多い場合は傷病手当金は受給できません=改正後はその日数は温存されます)
▼健保独自・会社独自の上乗せ制度がある場合
その他、健康保険組合に加入していて独自の上乗せ給付がある場合や、会社が独自で傷病手当金が出る場合の上乗せ制度を準備しているなど、ケースバイケースで傷病手当金を受給したほうが良いのか、温存しておいたほう良いのか違ってくる可能性があります。
会社内でも制度に詳しい人にご相談を
ここまで傷病手当金の改正点や注意点をかい摘まんで説明してきましたが、現在は改正直後のため、まだ会社側もそういった点について対応が追いついていない事が考えられます。傷病手当金を受給することになった場合は、まず会社で健康保険制度や福利厚生制度に詳しい方(総務など会社により異なります)に確認することをおすすめします。
※本稿では、専門的な用語をできるだけわかりやすい用語に置き換えています。また、ざっくりとイメージをつかめるよう簡略な説明となっているため、すべての要件や制度の詳細まで触れていません。気になったときは自身が加入している健康保険のサイトなどをご参照ください。
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