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値上がる小麦 ウクライナ危機が与えた「恐怖心」

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が長期化する中、生活に欠かせない小麦の価格高騰への懸念が強まっている。現時点で供給量に問題はないものの、値上がりの背景には将来的な需給バランスの崩壊といった「恐怖心」があると指摘する声もある。消費者への影響は「半年以上続く」と予測する専門家もおり、今後の情勢を注視する必要がありそうだ。

お好み焼き鶴橋風月でモダン焼きを調理する担当者=大阪市天王寺区(竹川禎一郎撮影)
お好み焼き鶴橋風月でモダン焼きを調理する担当者=大阪市天王寺区(竹川禎一郎撮影)

米シカゴ商品取引所の先物市場では、ウクライナ侵攻後の今月初旬、小麦の価格が14年ぶりに最高値を更新した。小麦の約9割を輸入に頼る日本では、海外から輸入した小麦を政府が製粉会社などに売り渡すシステムを取っている。半年ごとに見直される売り渡し価格は今年4月以降、前期比で17・3%も上昇することになった。

「値上がりは想定外だった」。お好み焼きチェーン「鶴橋風月」の鶴橋本店(大阪市天王寺区)の担当者はため息をついた。

肉や食用油の高騰を受け、4月以降のメニュー値上げを検討していたところ、ウクライナ危機が直撃。同店だけでも1日約6キロの小麦粉を使う。新型コロナウイルス禍で客足が減っていたこともあり、「最終的にどれくらいの影響が出るのか見当がつかない」と話した。

一方で農林水産省によると、日本の輸入元の大半は米国やカナダ。これに対し、世界有数の小麦輸出国であるロシア、ウクライナとは、そもそも食用小麦の取引はないという。

小麦の供給が減少したわけではないのに価格は高騰する背景には、輸出大国である両国からの供給が途絶えるのではとの「恐怖心」が、世界中で広がったとの見方がある。

農産物の輸出入に詳しい近畿大経営学部の勝田英紀教授は「多くの食品は世界的に見ればだぶついている状態」と指摘。農林水産省によると、日本国内では特定の国から輸入できないなどの不測の事態に備え、2・3カ月分の小麦が備蓄されている。ウクライナ危機を受け、今のうちに大量に仕入れようと考える人もいるかもしれないが、「安易な買い占めは結果的に損をすることになる」(勝田氏)として、消費者に落ち着いた行動を呼びかけている。

ただ長引く侵攻に、悲観的な予測もある。第一生命経済研究所の首席エコノミスト、熊野英生(ひでお)氏は「小麦の値上げは長期間続くのでは」と分析する。「小麦製品はコメに並ぶ主食であり、値上げの痛みから逃れることは難しい」とも話す。

サーモン、カニ… 日本の食卓に打撃も

ウクライナ危機は小麦だけでなく、日本の食卓にも大きな影響を与えそうだ。

例えば幅広い世代に人気のノルウェー産サーモン。情勢の緊迫化で欧州からの航空機がロシアの領空内を飛行できず、空輸が困難な状況になっている。遠回りのルートでの輸入を余儀なくされ、輸送費もかさむ。

「提供できるだけまだいい」。大阪市西成区のすし店「すし寛」の藤井裕展(ひろのぶ)さん(54)は肩を落とす。藤井さんによると、サーモンの仕入れ価格は3月上旬から高騰。1キロ1800円程度から2500円程度まであがった。現在は入荷できたとしても2~3キロにとどまり、ゼロの日も珍しくない。

日本は水産物の多くを輸入で賄っている。農林水産省によると、昨年のロシアからの輸入額は約1381億円で、中国、チリに次ぐ3位だ。中でもカニは約380億円、ウニは約98億円で、ロシアが最大のシェアを占める。経済制裁が続いて輸入が停滞すれば、国内での価格高騰が予想される。

戦地となったウクライナには広大な農地が広がり、欧州の「穀倉」とも呼ばれる。主に欧米で食用油として使われるひまわり油の輸出量は世界1位。生産に影響が出たり供給が途絶えたりした場合、代替品として日本で主流の菜種油の需要が高まり、価格高騰につながる恐れもある。

ウクライナは、ウシやブタの飼料となるトウモロコシの輸出大国でもある。トウモロコシは米シカゴ商品取引所の先物市場で10年ぶりの高値を付けており、食肉の値上げを懸念する声も出ている。(中井芳野、小川原咲)


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