ただし、就業規則等において、事後の届け出による取得を認める旨を定めている場合は、その定めに従います。たとえ就業規則等での定めがなくても、使用者が任意で有休取得に応じることに問題はありません。
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有休取得中の賃金の計算方法として、以下の3つがあります。
- 通常の賃金を支払う(日給、週給÷当週の所定労働日数、月給÷当月の所定労働日数)
- 平均賃金を支払う(直近3カ月間で支払った賃金の総額÷暦日数(休日を含む))
- 健康保険法の標準報酬日額
使用者は、自社が採用する算出方法を就業規則に明記しなければならず、部署や従業員ごとに算出方法を変えることはできません。
「1時間」から取得できる有休
有休中も通常の出勤として取り扱われ、通勤手当も支給賃金に含むのが一般的です。月給制で前もって定期代を支給している場合、部分的に定期代の払い戻しを受けることはできないからです。ただし、実際の出勤日に基づき、通勤手当を後払いとする場合は、支給の必要はないとされています。
有休は、時間単位での取得が可能ですが、時間単位で取得できる有休は、合算で年5日までとされています。1時間当たりの賃金は、原則として、前述の3つの方法で算出した1日ごとの賃金を、当日の所定労働時間数で割って計算します。
運用開始にあたっては、あらかじめ就業規則に時間単位の有給休暇を導入する旨、取得の条件などを記載し、労使協定を締結する必要があります。
消化しきれなかった有休はお金になるか
会社が有休の日数を買い上げる、つまり金銭と交換するのは違法です。有休の日数を買い上げることによって、「年次有給休暇を与えなければならない」という法律に対する違反行為とみなされてしまうからです。
ただし、「未消化の有休が時効になって消滅する」とか、「まもなく退職する予定だが、有休が残っている」といった場合は、事前の買い上げではなく結果的な取り扱いとなるため、会社が買い上げても法律違反とはなりません。
ただし、就業規則に「退職時に残った年次有給休暇を買い上げる」と規定されていない限り、あくまで買い上げは会社側の配慮です。必ず会社が買い上げなくてはならないという法的な義務はありません。
休日出勤したときの「代休」や「振替休日」、「有給休暇」についてみてきました。いずれを利用するかでお給料は変わってきます。違いを知って、適切に利用することが大切です。(ファイナンシャルプランナー 内藤 眞弓)
内藤 眞弓(ないとう・まゆみ)
ファイナンシャルプランナー
1956年生まれ。大手生命保険会社勤務後、ファイナンシャルプランナー(FP)として独立。金融機関に属さない独立系FP会社「生活設計塾クルー」の創立メンバーで、現在は取締役として、一人ひとりの暮らしに根差したマネープラン、保障設計などの相談業務に携わる。『医療保険は入ってはいけない![新版]』(ダイヤモンド社)、『お金・仕事・家事の不安がなくなる共働き夫婦最強の教科書』(東洋経済新報社)など著書多数。