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JR西日本のローカル線存廃 苦境30区間の命運

利用低迷が著しいローカル線のあり方をめぐり、鉄道会社を中心に国も巻き込み議論が活発化してきた。都市部で稼いだ分で不採算路線をまかなう従来のやり方は、人の移動そのものが減少する新型コロナウイルス禍により転換期を迎えている。2期連続で最終赤字となる見通しのJR西日本は、窮状を理解してもらうべく一部区間の収支状況を公表する方針を決めた。しかし沿線の自治体では「切り捨てにつながる」と早くも波紋が広がっている。

赤字路線の補塡限界に

「大量輸送機関としての特性が発揮できず、一事業者の経営努力では維持が困難になっている」

JR西の長谷川一明社長は2月の定例会見で、利用が低迷する一部ローカル線について存続が難しい現状を訴えた。

一部区間の収支状況は4月にも公表する予定で、対象は1キロあたりの1日平均利用者数(輸送密度)が2千人未満の区間。コロナが感染拡大する前の令和元年度実績で30区間あり、在来線全体の営業距離のおよそ3分の1を占める。

芸備線の東城(とうじょう)-備後(びんご)落合(輸送密度11人)▽同線の備後落合-備後庄原(しょうばら)(同62人)▽木次(きすき)線の出雲横田-備後落合(同37人)-など中国地方が多く、1日100人未満の区間も珍しくない。ただ、対象には兵庫県西部や和歌山県の一部が含まれており、近畿2府4県も例外ではない。

長谷川氏は公表を決めた理由を「(自治体側と)話をする中で認識のギャップがある。基礎的な背景として示したい」と説明。苦しい経営実態を明らかにすることで、自治体側との議論を前に進めたい考えだ。

こうしたローカル線の多くは、単独では採算が取れていない。それでも地域の足として維持されてきたのは、「内部補助」と呼ばれる仕組みで支えてきたからだ。利用者の多い都市部の主要路線や新幹線の稼ぎで、不採算路線の経費をまかなってきた。

しかしコロナによって、そのあり方は転換期に入っている。外出自粛要請やリモートワークの普及で、都市部でさえ鉄道の利用は急減。JR西の令和4年3月期連結決算の最終損益は、最大で1165億円の赤字になる見通し。2332億円の最終赤字だった前期に続いて、2期連続の赤字を見込む。

JR西はコロナの感染収束後も、利用者数はコロナ禍前の水準に戻らないと想定。内部補助は「つじつまが合わなくなってきている」(長谷川氏)状況だ。

「車社会なのに…」

JR北海道やJR四国はすでに全区間の収支を公表。JR九州も原則輸送密度2千人未満の区間で営業収益や経費を明らかにしている。JR西も各社に追随する判断をしたわけだが、沿線自治体からは早くも不満がくすぶる。

「一部のローカル線の収支のみを問題視することは、地方切り捨てに直結する」。国土交通省が3月に開いたローカル線をめぐる有識者検討会に参加した広島県の湯崎英彦知事はこう述べ、JR西を牽制(けんせい)した。

同県内には、芸備線や木次線など、収支の公表対象区間を抱えるローカル線が多く走っている。この20年で可部線の一部と三江(さんこう)線という廃線を経験しているだけに、危機感は根強い。

兵庫県も「廃止になれば地域の足として影響が出る。国の動向を踏まえつつ状況を注視する」と警戒する。

一方で、近畿のある自治体の担当者は「(2千人未満の)基準が示されることは覚悟していた」と話す。廃線には抵抗を示すものの、鉄道会社が経営状況を提示することで、議論すること自体への地元理解は広がるのではないかという。

鉄道に対する地域住民の思いは複雑だ。利用者は減る一方でも、廃止が議論の遡上(そじょう)に上がると鋭い反発が起こる。鉄道関係者は「なぜ鉄道にこだわるのか。地域が完全な車社会になっているのに、心理的なノスタルジーがあるのだろう」と嘆いた。

国も検討に本腰

とはいえ、ローカル線の存廃は全国的な課題だ。2千人未満の区間は、昭和62年度時点で全体の16%だったが、令和2年度には39%まで増加した。

国交省の担当幹部は2月の検討会初会合の冒頭で、「これまでの構造がコロナで立ち行かなくなるなど、一部線区は危機的な状況にあると言わざるを得ない」と述べた。検討会は、廃線だけでなく、利用実態に見合わない鉄道以外の移動手段を検討することもテーマにしている。

JR西は鉄道廃止後に導入した代替交通手段として、富山市内でのLRT(次世代型路面電車)や、旧三江線区間でのデマンド(需要対応)タクシーを紹介し、地域の特性に合った交通手段の検討が必要だとした。

それでも、あるべき姿の模索は容易ではない。鉄道会社が地域に対話を持ちかけても「自治体のみなさまは『廃止されるのではないか』と構えてしまって建設的な議論ができない」(JR東日本の坂井究(きわむ)常務)という。

ローカル線の存続は、人口減少や東京一極集中という構造的な課題にコロナが追い打ちをかける。JR西の倉坂昇治副社長は国の検討会で「内部補助はもはや成り立っていない。時間的な余裕、猶予は限られている」と述べた。問題の先送りは困難で、議論の停滞は許されない状況だ。(岡本祐大)


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