総務省、5G整備目標引き上げ デジタル田園都市国家目指し、計画前倒し

    総務省は29日、第5世代(5G)移動通信システムや光ファイバー回線といったデジタルインフラの整備計画を発表した。5G網の人口カバー率は、令和5年度末時点の目標を従来の90%から95%に引き上げた。ただ、これまで日本のIT政策はインフラ整備を重視し、結果的に技術開発やサービス競争に負けており、技術の社会実装やそれに伴う利便性の向上が実感できなければ絵に描いた餅に終わりかねない。

    総務省=東京都千代田区
    総務省=東京都千代田区

    整備計画は、岸田文雄首相が推し進める「デジタル田園都市国家構想」の実現に不可欠な基盤となる。5Gは現在の規格以上の高速通信が可能で、自動運転や遠隔医療といった分野での活用も期待できる。NTTドコモなど携帯電話事業者が基地局建設を進めるが、人口カバー率は2年度末時点で3割程度にとどまる。

    金子恭之総務相は同日の閣議後会見で「整備計画を着実に実行し、デジタル田園都市国家構想実現に貢献していく」と述べた。

    高速インターネットが可能な光ファイバー回線は、従来目標を3年前倒しし、9年度末までに世帯カバー率99・9%とする。都市部に集中するデータセンターは、地方を中心に5年程度で十数カ所を整備し、災害に備えた分散を急ぐ。日本海側を結ぶ海底ケーブルも新たに設ける。

    ただ、政府はたびたびIT政策として、インフラ整備を推し進めてきた。平成12年には電子政府の実現などを目指すイージャパン戦略を掲げ、光ファイバー網を整備。23年の東日本大震災を教訓に以降はネットワークの強靱(きょうじん)化にも注力してきた。

    一方で、グーグルやアップルといった米巨大ITのような世界に通用するサービスも生まれず、5Gの技術開発では、巨額の資金を背景に成長著しい中国にも後れをとった。

    今回整備する通信網は、6G以降の次世代通信も見据えたものになる。デジタル技術を活用した地方での暮らしなど、デジタル田園都市国家の実像が定かでないまま計画を進めてしまえば、これまでと同じ失敗を繰り返すことにもなりかねない。(高木克聡)


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