岸田文雄首相が29日に緊急経済対策の策定を指示したのは、夏の参院選を控え、ウクライナ情勢の緊迫化に伴う家計の負担軽減が喫緊の課題だからだ。原油高など物価上昇の負担増は低所得者層では消費税率3%分程度にも上るとの見方もある。外国為替市場で円安基調が強まる中、輸入に頼るエネルギーや穀物の価格は高止まりが続く懸念があり、迅速な支援がポイントだ。
:quality(50)/cloudfront-ap-northeast-1.images.arcpublishing.com/sankei/TUTGJOKTURNRNISU42JMW4KDTI.jpg)
原油高対策は、首相が4月末までの延長を表明したガソリンや灯油などの価格上昇を抑える石油元売り会社への補助金の継続が柱だ。補助金をいつまで続けるのか、ガソリン1リットル当たり25円の補助上限の引き上げなどが焦点となる。
ガソリン税の一部を減税する「トリガー条項」の凍結解除は、国と地方で年1兆5700億円の税収減となる代替財源の確保や税制関連の法改正が必要で、早期の凍結解除は難しい。このため補助金での対応を優先する。また、ロシアのウクライナ侵攻に伴い両国が一大生産地の小麦など穀物価格も上昇しており、価格上昇分を補助金などで補塡(ほてん)することを検討する。
民間シンクタンクのみずほリサーチ&テクノロジーズは、原油高対応の現在の補助金が継続しても、足元の物価高で年収300万円未満の低所得世帯は前年比4・3万~4・9万円の負担増になると試算。同社の嶋中由理子エコノミストは「消費税率が5%から8%に引き上げられた際に匹敵する影響だ」と指摘する。
ただ、金融政策の違いで日米の金利差が拡大するとの思惑から為替市場では円安がさらに進む可能性もある。鈴木俊一財務相は29日の会見で「悪い円安にならないように注視していく」と強調したが、今後の為替動向によっては家計負担はさらに増す恐れもあり、困窮世帯や企業への効果的な支援が求められる。(永田岳彦)