円安抑制へ為替介入も 政府・日銀、政策協調の観測

    物価高につながる急速な円安を抑制するため、政府と日本銀行が円買いドル売りの為替介入を含む政策協調に動くとの観測が浮上している。30日、岸田文雄首相と黒田東彦(はるひこ)総裁が会談したことで、外国為替市場の円相場は円高方向へ急伸した。日銀は円安対策での政策修正を見込む長期金利の上昇圧力を抑えようと、追加の国債買い入れ方針も併せて発表しており、市場との攻防は熱を帯びている。

    黒田氏は首相との会談後、記者団に「為替について特別なことはなかった」と指摘。政府と円安抑制策を議論するのではとの市場の観測を、否定してみせた。

    ただ、30日の東京外国為替市場では、円相場が一時1ドル=121円台後半と前日比2円近くまで円高ドル安が進み、会談自体が一定の牽制(けんせい)効果を生んだ形だ。

    米国がインフレ退治で政策金利の引き上げを加速する姿勢をみせる中、低金利政策を維持する日本との金利差拡大が意識され、運用に不利な円を売る動きが続く。輸入価格を引き上げる円安は原油高など原材料価格の高騰を助長する効果があり、新型コロナウイルス禍から回復が遅れた日本経済に一層打撃を与える。

    だが、日本は欧米と異なりインフレ圧力が賃金の上昇につながっておらず、日銀は大規模金融緩和による景気下支えを緩めることができない。かたや岸田政権は夏の参院選を前に家計が悲鳴を上げる物価高を懸念して追加経済対策の策定を急いでおり、「身動きが取れない日銀に代わって、政府が為替介入で円安に対応するのでは」(エコノミスト)との見方がくすぶる。

    一方、日銀も手をこまねいてはいない。〝防衛ライン〟と位置付ける0・250%の利回りで10年物国債を無制限に買い入れる「連続指し値オペ」を29~31日に初めて実施している上、30日は通常の国債買い入れオペの増額も発表。大量の国債を買い入れ金利の低下(債券価格の上昇)を促すことで、日銀が円安を嫌がり金利上昇を認めると期待する市場にクギを刺した。

    とはいえ大和証券の岩下真理チーフマーケットエコノミストは、米国のインフレ加速や利上げに伴い国内でも金利上昇圧力は今後も強まるとして「一時的には抑制に成功しても、終わりが見えない」と指摘する。指し値オペのような大技を繰り出し続けるのも限界があり、市場ではいずれ日銀が根負けし防衛ラインを引き上げるとの見方が強い。(田辺裕晶)


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