財務省は5日実施した10年物国債(4月発行)の入札で、国債の額面価格に対する利子の割合を示す「表面利率」を、従来の年0・1%から0・2%に引き上げた。米国の急激なインフレと金利上昇の影響により日本でも長期金利が上昇しているのを踏まえ、市場の実勢に合わせる。10年物国債の利率引き上げは平成27年3月以来、7年ぶりだ。
表面利率は、国債の額面価格に対し投資家が受け取れる利子の割合を示すもので、財務省が市場で売買される国債の利回りを踏まえて決める。0・2%なら額面10万円の国債を買うと毎年200円の利息が入る。
長期金利の指標となる新発10年債の利回りは今年に入って上昇傾向が続き、現在は0・2%前後で推移する。表面利率が低いと投資家にとって魅力がなくなるため、財務省は市場の利回りに合わせて引き上げた。
固定型の住宅ローン金利は新発10年債の利回りが基準となる。三菱UFJ銀行など3メガバンクは長期金利の動向を踏まえ、住宅ローンの固定型10年の基準金利を今年に入って引き上げた。国債の表面利率の引き上げで長期金利の上昇圧力が強まり、ローン金利がさらに上がる可能性もある。
10年物の表面利率はバブル経済末期の平成2年に7%まで達したが、25年4月に始まった日本銀行の大規模な金融緩和策「異次元緩和」を背景に少しずつ低下してきた。27年3月に0・3%から0・4%に上がったものの、28年3月以降は0・1%が続いていた。