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ハッブル宇宙望遠鏡が「最遠の星」発見 なぜ129億年前の微弱な光を捉えたか

ハッブル宇宙望遠鏡が、天体観測史上もっとも遠い場所にある星を観測することに成功した。

ハッブル宇宙望遠鏡(NASA)
ハッブル宇宙望遠鏡(NASA)

「エアレンデル」と命名されたその星は、質量が太陽の50~500倍、数百万倍の明るさを持ち、138億年前に発生したビッグバンからわずか9億年後に誕生したと考えられる。ハッブルはどのようにその星を発見したのか? その観測手法をわかりやすくご紹介したい。

129億光年離れた場所で、129億年前に発せられた光を捕捉

ハッブルが観測した恒星「エアレンデル」(Earendel)。それはこの星の129億年前の姿だ。(NASA, ESA, Brian Welch/JHU, Dan Coe / STScI)
ハッブルが観測した恒星「エアレンデル」(Earendel)。それはこの星の129億年前の姿だ。(NASA, ESA, Brian Welch/JHU, Dan Coe / STScI)

今回のハッブルの偉業は、米国をはじめ、千葉大なども参加する国際研究チームによって3月30日、科学誌「ネイチャー」に発表された。「エアレンデル」(Earendel)とは、古い英語で「モーニング・スター」を意味し、和訳すれば「明けの明星」となる。

この恒星が129億年前に、129億光年離れた場所で発した光は、129億年の時間をかけて地球に届き、それをいまハッブルが捕捉したことになる。ビッグバンは今から138億年前に発生したことが判明しているので、エアレンデルはそのわずか9億年後に生まれた原始星である可能性が高い。

これまでに観測されたもっとも遠く、もっとも古い星は、2018年にハッブル望遠鏡が捕捉した恒星で、その誕生はビッグバンの約40億年後、いまから98億年前に生まれた星だ。つまりこれまでの記録をいっきに31億年も更新したことになる。

ハッブルは、NASA(米航空宇宙局)とESA(欧州宇宙機関)、STScI(宇宙望遠鏡科学研究所、米ジョンズ・ホプキンス大学内)によって共同運用されているが、今回の論文の筆頭筆者であるジョンズ・ホプキンス大学の天文学者ブライアン・ウェルチ氏は、このようにコメントしている。

「エアレンデルは、宇宙においてもっとも初期の恒星である可能性がある。この星を調べることによって、私たちが知らない世代の宇宙を探ることができるかもしれません」

赤外線でしか見えない宇宙最古の光

ハッブルはどのようにエアレンデルを観測したのか? それを極力、わかりやすくご紹介したい。

ビッグバンによって誕生した宇宙は、その後も膨張し続けている。ビッグバンから9億年後に生まれたエアレンデルの光は、129億年の時間をかけてやっといま地球に到達したわけだが、その間も宇宙は膨張し続けているので、現在のエアレンデルと地球の距離は129億光年ではなく、250~280億光年まで離れていると考えられる。

エアレンデルの光が129億年間飛び続ける間も宇宙空間自体は膨張したため、その光の波長は引き延ばされ、長くなった。つまり、我々の目に見える可視光線の波長が長くなり、地球に届くころには赤外線に変化(赤方偏移)したのだ。これは通り過ぎる救急車のサイレンの音程が下がるのに似ている。

宇宙から降り注ぐ赤外線は、地上からは観測しづらい。そのほとんどを大気が吸収してしまうからだ。また、地上からの天体観測では、大気が揺らぎ、天候にも左右されるため、精密な観測ができない。それを避けるには、望遠鏡自体を宇宙空間に設置するのが最良だ。

そのためハッブル宇宙望遠鏡は1990年、スペースシャトルに搭載されて打ち上げられた。ディスカバリー号のカーゴからリリースされたハッブルは現在、高度約540kmの地球周回軌道上にある。

私たちが肉眼で見ている星々は、太陽系の惑星か、または銀河系内にある星々にしか過ぎない。エアレンデルはそれよりもはるかに遠い場所にあり、そもそもその星が発した光は赤外線でしか見ることができない。

しかし、ハッブルには可視光線用のカメラのほか、赤外線カメラも搭載している。それをエアレンデルがあるくじら座に向け、長時間露光撮影をする。

すると、肉眼では決して見ることのできない遠くて古い星々の姿が、赤外線データ上に浮かび上がってくるのだ。

ハッブルの能力を最大化、巨大銀河団による「重力レンズ効果」

ただし、遠方にあるエアレンデルの光は極度に微弱だ。ハッブルが搭載する望遠鏡は、本来的にはそれを捕捉する能力を持っていない。ただし、「重力レンズ効果」を利用すれば、それが可能となる。


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