マツダのカーボンニュートラルへの取り組みは特殊のように思える。世界の自動車メーカーが電気自動車(EV)信仰に突き進むのに対してマツダは、内燃機関の可能性を追求し続けているからだ。
自動車を構成する要素を包括的に開発する「スカイアクティブ」をキーワードに、ガソリンとディーゼルの両方から内燃機関の燃焼効率を高め、燃費とCO2排出量を抑制したエンジンを開発した。スカイアクティブ化はエンジンだけにとどまらず、ミッションやサスペンションにも及ぶ。パワーユニットだけでなく、全方位的な視点でクルマの可能性を追い求めているのである。
世界的にも稀な戦略
それがもっともストレートに表現されたのが、今回プロトタイプながら“極秘試乗”が許された新開発の「CX-60」だ。マツダ最大のSUVである「CX-8」に近似した堂々たる体躯のSUVである。
特徴的なのは、新開発した直列6気筒3.3リッターディーゼルターボエンジンを搭載していることだ。しかもそれは縦置きに搭載可能。多くの自動車メーカーが環境に関しての優位性を求めて排気量を下げるダウンサイジング化に邁進し、直列4気筒、もしくは直列3気筒エンジンをクルマの前端に横置きで搭載するのに対し、マツダはその心臓部の排気量を拡大し、マルチシリンダー化したというのだから驚きである。
しかも、新開発のエンジンに最適なトルクコンバーターレスの8速ATを自社開発。まるでかつてのスポーツカーのように、前から後ろまで縦にシンメトリーな配列になるユニットを発表したのである。当然のことながら、そのパワーユニットが搭載可能なFR系プラットフォームも新開発。世界的にも稀な戦略でカーボンニュートラルに対応している。