《ある会社員の例で控除額をシミュレーション》
■所得は給与所得のみの想定
■6,000万円の新築マンションを購入(認定住宅)
■住宅ローン借入総額5,000万円
■住宅ローン控除額
・見直し前…5,000万円×1%=50万円…10年間で総額500万円
・見直し後…新築5,000万円×0.7%=35万円…13年間総額で455万円
《年収別のシミュレーション※》
■年収800万円の場合
所得税(年末調整後)45万円>住宅ローン控除35万円 → 所得税10万円(見直し前 0円)
■年収600万円の場合
所得税(年末調整後)17万円<住宅ローン控除35万円 → 所得税0円(見直し前 0円)
■年収400万円の場合
所得税(年末調整後)5万円-住宅ローン控除35万円→ 所得税0円(見直し前 0円)
※所得税のみで概算比較。扶養の状況等によって変動
▼年収600万円以下にとっては「改悪」といえず?
今回はシンプルに所得税のみで比較しました。
年収800万円の場合、毎年の税負担が10万円アップすることになります。つまり、年収800万円以上は見直しによるデメリットを受けるものの年収600万円以下は影響を受けず、控除期間が延長されたことによるプラス3年分の継続効果が期待できます。
「新築優遇」の落とし穴! 物件選びは無理のない範囲で
このように、新築認定住宅は控除限度額・控除期間ともに優遇されています。つまり、国としては住宅ローン控除で新築認定住宅購入を推進したいという意向が伺えます。
しかし、だからといって新築認定住宅にこだわりすぎて無理に予算を上げれば購入価格は高額になり、購入自体が難しくなったり、返済資金で家計が圧迫されることにもなりかねません。購入はできたものの、結局マイホームを手放してしまった事例も少なくありません。
住宅ローン控除は確かに大きな節税効果がありますが、控除ありきでの購入は将来家計に無理が起こる可能性があります。毎月のローン返済に無理がないように、マイホーム購入前には今後の収入予測も必ずやっておきたいチェック項目です。入居年によっても、住宅ローン控除額は変わります。
また、所得税から控除できない金額について、住民税から控除できる金額も最高97,500円となります。家族のライフプランを再チェックして事前にキャッシュフロー表を作成することをおすすめします。
「控除」目的のマイホーム購入にはリスクも
税金を取り戻すことは、キャッシュを取り戻すこと。キャッシュを早期回収するならば、できるだけ初期の控除期間の控除額が多いほうがよいことになります。なぜなら、早めにキャッシュを取り戻して運用することもできるからです。
今回の見直しで控除率は1%から0.7%までダウン。そのため、住宅ローン控除における毎年の最高控除額は減少します。先ほどの収入別シミュレーションでもお示ししたとおり、高所得者層ほど見直しによるデメリットの影響を受けやすくなりますが、中間層では控除を使い切れない可能性のほうが高いため影響を受けにくいのです。
住宅ローン控除の枠が減ることで結果的に「増税」になるのであれば、住宅ローン自体を減らすという選択肢もあります。親や祖父母からの贈与(住宅取得資金等贈与など)を使うことで頭金を積み増しすることもできます。また、共稼ぎなら夫婦共有で購入して住宅ローン控除を夫婦2人で活用しながら、節税分を運用にあてるなど夫婦の資産形成に活用してはいかがでしょうか。
【新時代のマネー戦略】は、FPなどのお金プロが、変化の激しい時代の家計防衛術や資産形成を提案する連載コラムです。毎月第2・第4金曜日に掲載します。アーカイブはこちら