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ジム・焼き肉…紳士服大手多角化進む AOKIや青山商事 コロナでスーツ売れず

新型コロナウイルス下での在宅勤務の広がりなどでスーツ需要が落ち込んでいる。仕事着のあり方が変わる中、業績低迷に歯止めがかからない紳士服大手は不採算店の閉鎖を進めるとともに、事業の多角化を急ぐ。換気が行き届いているといった理由で注目を集める焼き肉店や、フィットネスジムの運営などに乗り出している。主力の紳士服事業に並ぶ経営の柱に育てようと注力する大手もある。

「快活CLUB」赤坂見附駅前店の鍵付きの完全個室内=東京都港区
「快活CLUB」赤坂見附駅前店の鍵付きの完全個室内=東京都港区

紳士服店「AOKI」を展開する業界2位のAOKIホールディングスは、エンターテインメント子会社の快活フロンティア(横浜市都筑区)を通じた紳士服以外の事業拡大を進める。平成12年に多角化戦略の一環として立ち上げた子会社をてこ入れする。

コロナ禍で業績は低空飛行が続いている。令和4年3月期は連結最終損益が2年ぶりに13億円の黒字に転換する見通しだが、コロナ禍前の元年3月期の46億円に比べると3分の1以下。黒字確保の要因は店舗閉鎖など大規模な構造改革で、連結売上高は元年3月期からは約2割も減少する見込み。新型コロナが収束した後も在宅勤務や服装のカジュアル化の流れは止まらないとみられ、収益の多角化は必須となっている。

AOKIホールディングス傘下のエンターテインメント事業会社、快活フロンティアが展開する複合カフェ「快活CLUB」の赤坂見附駅前店=東京都港区
AOKIホールディングス傘下のエンターテインメント事業会社、快活フロンティアが展開する複合カフェ「快活CLUB」の赤坂見附駅前店=東京都港区

快活フロンティアは、複合カフェ「快活CLUB」が主力だが、元年6月に24時間営業のフィットネスジム「FiT24」を新たに始めた。ところが、その約半年後にコロナ禍に突入。営業面での制約を余儀なくされたが、その後、在宅勤務の定着に伴って運動不足を解消したいというニーズが増えたことから、FiT24の拡大を検討する。

さらに力を入れているのがシェアオフィスだ。鍵付きの完全個室を今年3月までに300店以上に導入。3時間利用した場合の料金を1420円に抑えたほか、多様な決済手段に対応するなど使い勝手をよくした。都心の店舗では、昼間の利用率が8割を超え好調に推移しているという。

中川和幸常務は「今後、女性客の開拓を進めるほか、公式アプリで空室数確認や当日予約を可能にする」と述べ、さらなる利便性向上に取り組む方針だ。

「洋服の青山」を展開する最大手の青山商事も多角化を急ピッチで進める。

同社は、100円ショップ「ダイソー」を展開しているが、今後は主に飲食店事業を強化する。各種飲食店の経営・運営を行う物語コーポレーションとフランチャイズ契約を結び、焼き肉店「焼肉きんぐ」やしゃぶしゃぶ店「ゆず庵」を出店。ほかにも「ミスターミニット」ブランドで行う靴修理や合鍵作成などリペア(補修)事業に注力する。

5年度を最終年度とする中期経営計画では、平成30年度に営業利益ベースで10%程度だった紳士服以外の比率を、50%程度まで引き上げる方針を示している。青山商事は「ビジネスウエア事業の再構築とともに、フランチャイズ展開で進める事業を拡大していく」(広報担当者)考えだ。

紳士服市場は17年度に政府が夏場の軽装「クールビズ」を推奨したころから縮小が顕著になり、各社で多角化経営の動きが出始めた。これまで著しい進展が見られなかった紳士服業界の多角化戦略だったが、コロナ禍で本腰を入れて取り組まなければならなくなったというのが実情だ。総務省の家計調査によれば、1世帯あたりのスーツ購入額は令和3年に2721円と、この20年で3分の1以下にまで減少している。(青山博美、写真も)


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