カーボンニュートラルを補完 資源循環型ベンチャーが地球温暖化対策に貢献


    デロイトトーマツベンチャーサポート(DTVS)です。当社はベンチャー企業の支援を中心に事業を展開しており、木曜日の朝7時から「MorningPitch(モーニングピッチ)」というイベントを東京・大手町で開催しています。毎週5社のベンチャーが大企業の新規事業担当者や投資家らを前にプレゼンテーションを行うことで、イノベーションの創出につなげることを狙いとしています。

    モーニングピッチでは毎回テーマを設定しており、それに沿ったベンチャーが登場します。ピッチで取り上げたテーマと登壇ベンチャーを紹介し、日本のイノベーションに資する情報を発信する本連載。今回はNature/環境です。


    プラスチック資源循環促進法が4月に施行

    コンビニエンスストアやスーパーで無料配布されるプラスチック製スプーンなど、一度だけ使われて廃棄されるワンウェイプラスチックの使用量削減を目的とした「プラスチック資源循環促進法」が4月1日、施行されました。2020年に導入されたレジ袋の有料化に次ぐ大型の対策で、削減対象となるのはホテルが提供するヘアブラシや歯ブラシなどを加えて12品目。事業者は、削減計画を策定して使用量を減らすよう義務付けられており、木などの代替素材への転換といった対応に取り組み始めています。

    こうしたタイミングもあって今回は、ビジネスと環境保全の両立をテーマに、「資源循環」に焦点を当てて話を進めていきます。


    国際的な枠組みが少ない資源循環

    気候変動対策については、気候変動が金融市場に重大な影響を及ぼすとの認識に基づき2015年に設立された気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)や、世界の平均気温上昇を産業革命前から1.5度に抑えると合意した第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)など、グローバルな枠組みが整備されています。これに対して資源循環は、国際的に合意した目標はあまりありません。持続可能な事業や製品を示す指針「タクソノミー」や、脱炭素への道筋をつける13項目の政策パッケージであるグリーンディール政策など、欧州がルール形成の一部をリードしている状況です。

    環境問題のための資金源としてはESG投資が拡大しており、2020年の世界のESG投資額は18年比で15%増の35.3兆ドル(約4,300兆円)に達しました。ただ、気候変動への投資は拡大基調にあるのに対し、資源循環への投資はまだまだ不足しています。(1)カーボンニュートラルのような明確な方向性を示し難い(2)排出量のようなKPI(評価指標)が一律ではない―といった点が課題となっており、資源循環の推進によって企業価値がどのように向上するのかといった、価値創造ストーリーを通じた変革が重要になってきます。

    資源循環がカーボンニュートラルを補完

    一方、サーキュラーエコノミー(循環型経済)は世界経済を支える上で不可欠な存在となります。日本をはじめ米国、EU、英国は2050年のカーボンニュートラルを目指しておりますが、野心的な対策に依存するだけでは、50年時点での1人当たりの世界総生産が3.7%も落ち込む恐れがあります。しかし、サーキュラーエコノミーと組み合わせればプラス1.5%で推移するとみられ、資源循環による補完は必須だと考えております。

    こうした状況を踏まえると企業に対しては、長期的な経営改革に環境視点を織り込みながら資源循環と気候変動対策の両輪によって環境と経済成長の両立を目指す戦略が、一段と求められることになるでしょう。

    資源循環という課題に取り組むには、ベンチャーをはじめとした外部企業との共創が有効です。例えば、

    (1)環境保全の指標をデジタルで可視化するブロックチェーン技術

    2)環境配慮設計

    (3)二酸化炭素(CO2)を回収して有効利用するCCU(炭素回収活用)

    (4)素材・食料のアップサイクル(価値の高いものへの再利用)

    (5)シェアリングサービス

    といったソリューションが重要な役割を果たすので、今回注目しています。

    ブロックチェーンでトレーサビリティ

    特にブロックチェーン技術の活用で資源循環のトレーサビリティ(生産履歴の追跡)を大企業と行うスタートアップ企業が、市場で存在感を増しています。メルセデス・ベンツ(ドイツ)は、英サーキュラー社とバッテリー製造のサプライチェーンにおける温室効果ガスと二次材料の排出量を追跡、コバルトの調達に注力しています。BASF(ドイツ)は、バリューチェーンにおけるプラスチックの分別精度を高めるため、ベンチャーの技術を活用しています。丸紅はオランダ・サーキュライズ社との間でプラスチック製品の設計・仕様、加工条件、リサイクル履歴などのトレーサビリティを確保、開示しています。

    CCUを実現しながら資源循環への貢献を目指す領域でも、大企業・組織と共創するスタートアップの技術に注目が集まっています。米航空宇宙局(NASA)が主催するコンペでは、米エアカンパニーがCO2を糖に変換する技術で1位を獲得しました。

    今回は環境配慮素材、CCU、アップサイクル、エネルギー×シェアリング、環境×ブロックチェーンという5つの領域から5社を紹介します。


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