しかし、総務省の懸念をよそに携帯各社の激安販売は過熱し続け、最盛期となる2014年頃には番号ポータビリティで他社から乗り換えた顧客に最新スマートフォンを0円で販売するだけでなく、数万円、条件によっては10万円を超えるキャッシュバックも提供するという異常事態を招くこととなった。これに業を煮やした総務省は携帯各社への強硬な姿勢を強めるようになり、SIMロック解除の義務化や端末値引き規制など、激安販売の基となっている従来の商習慣に厳しい措置を相次いで打ち出してきた。
その究極形となったのが2019年の電気通信事業法改正である。この法改正によって携帯各社は通信契約と端末のセット販売が禁止されたほか、通信契約にひもづく端末の値引きも一部の例外を除いて2万円(税抜き)に制限。さらに2年縛りなど期間拘束のある契約に係る違約金も従来の10分の1水準にまで引き下げるなど、それまでの商習慣を根底から覆すことで端末の激安販売を困難にした訳だ。
「一括」と「実質」
にもかかわらず、ここ最近スマートフォンの激安販売が復活しているのはなぜかというと、その改正法の隙をうまく突いているからだ。確かに通信契約にひもづく端末値引きは規制されているが、通信契約にひもづかない値引きは単なる物販の範疇なので、電気通信事業法の規制は及ばない。
そこでスマートフォンの元の販売価格を大幅に値引き、それに通信契約にひもづく法規制上限の2万2000円(税込み)の値引きをプラスすることで、「一括1円」などの激安販売を実現しているのだ。それゆえショップで新規契約者に対し「一括1円」で販売されているスマートフォンは、誰でも回線契約する必要なく、一括2万2001円で購入できることは知っておくべきだろう。
もっともショップでの値引き額には限界もあるため、一括1円で販売される端末はやや古めの機種が多い。そこでより新しめのスマートフォンを激安販売する手法として、ここ最近、端末購入プログラムを活用し「実質1円」などという価格で販売されるものも見られるようになってきた。
端末購入プログラムとは、4年間など長期間の分割払いでスマートフォンを購入し、途中で返却すると残金の支払いが減る、あるいは不要になるという、主に高額なスマートフォンを購入しやすくするために提供されているサービス。「いつでもカエドキプログラム」(NTTドコモ)、「スマホトクするプログラム」(au)、「新トクするサポート」(ソフトバンク)、「楽天モバイルiPhoneアップグレードプログラム」(楽天モバイル)がそれに相当する。
そして「実質1円」などとして販売されている端末の金額は、先のショップでの値引きと通信契約に係る値引きに加え、端末購入プログラムを適用して購入し、指定された期間が過ぎた後に端末を返却して残金が免除された場合の金額となっている。端末を返却しなければ残金を支払う必要があり、それ以上の支払いが求められることから「一括」ではなく「実質」の金額が提示されている訳だ。