行き場を失った酒米をパフェに 創業300年の老舗京菓子店「いま必要な食品ロス対策」

新型コロナウイルス禍による飲食店の休業で日本酒の消費量が激減。全国の酒蔵で酒米が行き場を失うなか、酒米をパフェとして蘇らせた老舗和菓子屋の取り組みが注目を集めている。手掛けたのは京都に店を構える創業300年の老舗京菓子店、笹屋伊織(ささやいおり)だ。「同じ日本伝統の食文化を守りたい」と兵庫県丹波市の酒蔵と共同し、全国でも珍しい「酒米パフェ」を考案した。「地域に根ざす老舗だからできること、やるべきことがある」と意気込んでいる。

コロナ禍による日本酒需要の激減で行き場を失ってしまった大量の酒米(笹屋伊織提供)
コロナ禍による日本酒需要の激減で行き場を失ってしまった大量の酒米(笹屋伊織提供)

“酒米スイーツ”誕生のきっかけ

京都市左京区にある和モダンなカフェ「笹屋伊織別邸」で運ばれてきたおしゃれなパフェ。生クリームに粒あん、きな粉などが層になった和風スイーツのようにも見えるが、よく見ると粒あんと生クリームとの間に米粒のような層があった。

「最初はおはぎにしようと思ったんですが、酒米はもち米と違って硬くなりやすくて。そこでパフェにしてみたら相性が良かったんです」。こう話すのは、笹屋伊織取締役の田丸みゆきさん。1716(享保元)年の創業以来、京都御所や茶道の家元の御用を務める老舗京菓子店の“名物女将”だ。パフェの名は、その名もずばり「酒米パフェ」。おはぎをパフェにするというだけでも斬新な発想なのに、使っているのはもち米ではなく酒米。老舗和菓子店がなぜ、このような不思議なスイーツを考案したのか。

笹屋伊織が考案した「酒米パフェ」。下から寒天、黒蜜、バニラアイス、きなこ、あんこ、酒米、生クリーム、白玉、ようかんが層を成す。最中で蓋をした上にバニラアイスをベースにしたきな粉クリームを載せ、酒米団子と丹波黒豆をトッピング。税込み1650円(笹屋伊織提供)

背景にあるのは、コロナ下での酒類提供自粛による日本酒需要の激減だった。大納言小豆や黒豆など菓子作りで縁のある兵庫県丹波市は全国有数の酒どころとしても知られる。その酒蔵の一つである西山酒造場から、コロナ禍の影響で例年に比べて仕込み量が半減し、同蔵だけでも仕入れた酒米約100トン(一升瓶12万本分)が行き場を失くしているという状況を耳にしたのだという。

同じく米を原料とする日本伝統の食文化を扱う者として「このまま大量の酒米が廃棄されてしまうのは忍びない」と思った田丸さんは、「少しでも在庫を減らす手助けになれば」と酒米の一部を買い取り、酒米を使った新メニューを開発。カフェのメニューとして提供することを思いついた。

酒饅頭(まんじゅう)やゼリーなど、日本酒そのものを使ったスイーツはこれまでにもあるが、原料となる酒米を使ったスイーツは全国的にも珍しく、酒米を提供した西山酒造場からも「酒米で和菓子が作れるの?」と驚かれた。「これまでも桜餅に使用する道明寺粉を使ったリゾットを提供するなど、和菓子屋ならではの斬新なメニューを生み出してきた」という田丸さん。先代から続いてきた「新しいもの」にチャレンジする企業風土に誇りを持ってきた。

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