• 日経平均27049.47178.20
  • ドル円136.12136.13

円安が国益であるはずがない 日本をますます貧しくさせる「円安スパイラル」の恐怖

PRESIDENT Online

今年3月以降、日本の通貨「円」があらゆる通貨に対して安くなっている。その下落率はロシアのルーブルに次ぐほどだ。なにが起きているのか。野口悠紀雄・一橋大学名誉教授は、「このままでは日本は『円安スパイラル』に陥る危険がある。『円安が国益』という欺瞞から脱却し、一刻も早く金融政策を正常化すべきだ」という――

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/gyro
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/gyro

円の下落が続けば「円安スパイラル」に陥る

ロシアのウクライナ侵攻によって資源価格が急騰し、世界はインフレに向かって突き進みつつある。

日本も例外ではない。というより、急激な円安が進んでいることから、輸入価格の高騰に拍車がかかっている。このまま進めば「円安が円安を呼ぶ」という円安スパイラルが発生し、壊滅的な状態になりかねない。

私は、3月に刊行した『日本が先進国から脱落する日』(プレジデント社)において、円安こそが日本経済を貧しくした基本要因であると指摘し、20年以上にわたって続いた円安政策から脱却する必要性を強く訴えた。

いま、円安政策からの脱却は、一刻の猶予も許されない緊急の課題になった。

ルーブルに次ぐ下落率 円の独歩安

円・ドルレートは、2021年の秋以降、1ドル114~115円程度の状態が続いていた。しかし、今年3月中旬から1ドル120円を超える、異常といえるほど急激な円安が進行した。こうなった要因は、日米金利差の拡大だ。とくに、次の2つが大きい。

第1は、3月21日にアメリカFRB(連邦準備制度理事会)のパウエル議長が、利上げをスピードアップし、1回で0.5%の引き上げもあり得るとしたことだ。これを受けて、アメリカの中・長期債の利回りが急上昇した。

第2は、これに先立つ3月17、18日に、日本銀行が政策決定会合で金融緩和継続を決めたことだ。黒田総裁は、「円安が日本経済にとって望ましいという構造は変わらない」と発言した。

世界の中央銀行が、アメリカの利上げに対応すべく、競って金利の引き上げを行っている。そうした中で、日本だけが低金利を継続すると表明したため、円が急落したのだ。下落率は、ロシアのルーブルに次ぐ大きさだ。ルーブルを除けば、円の独歩安といってよい。

ウクライナ侵攻が始まった2月下旬以降、エネルギー関連の価格は一段と上昇している。これが続くと、後で見るように、日本の経常収支赤字が定着し、それがさらに円安を誘うという可能性も出てきた。

ビッグマック指数で、ついに中国にも抜かれた

『日本が先進国から脱落する日』で、私は、「円安が進んでいるので、ビッグマック指数で見ても、日本は中国に抜かれただろう」と書いた。

今年2月に『エコノミスト』誌から発表された数字では、実際に、中国に抜かれてしまった。ポーランドにも抜かれた。いまや日本より下位にあるのは、ペルー、パキスタン、レバノン、ベトナムなどといった国だ。

円の購買力を見るために、「実質実効為替レート」という指標が用いられる。国際決済銀行(BIS)が2月17日に発表した今年1月時点の円の実質実効為替レート(2010年=100)は、67.55となり、1972年6月(67.49)以来の円安水準となった。

このときの市場レートは、1ドル=115円程度であった。ところが、上記のように、その後、さらに円安が進んだ。

仮に実質レートが名目為替レートに比例的に低下するとすれば、1ドル=122円での実質レートは、63.7程度となっているはずだ。これは、固定相場制だった1971年11月の63.35と同程度の水準だ。

この頃、私はアメリカに留学していた。日本での給与が月2万3000円だったのに対して、アメリカの大学の周辺にあるアパートは、最も安いところで、賃料が月100ドル、つまり3万6000円だった。日本円の購買力が低いといかに惨めな状態になるか。それを身をもって体験させられた。

いまの日本円の購買力は、『日本が先進国から脱落する日』を書いていた2021年末よりも、さらに悪化している。私が日本の給与の安さを嘆いていた、まさにその当時まで低下してしまったのだ。


Recommend

Biz Plus

Recommend

求人情報サイト Biz x Job(ビズジョブ)

求人情報サイト Biz x Job(ビズジョブ)